doniti 日誌

( おもしろき こともある世を おもしろく)

緑陰長閑

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忘日、急に思い立って名栗村へ行く。

このあと数日雨予報なので、曇り空だが今日は貴重。てなわけで車で青梅の山奥に分け入って概ね1時間、名栗村到着。名栗川(入間川上流)の両脇に開けた狭い段丘の村。途中、青梅成木のミツバツツジは散り終わっていて残念。

名栗村に何がある? と言えば、個人が作ったという鳥居観音、山肌にもろもろの建物やら仏像やら観音様やらが点在する。それから小さなダム一つ、温泉らしい施設が二か所、あとはなぁ~~んもない。

 

 

鳥居観音の駐車場に車をぶち込んでその前にあるキャンプ場に降りてみる。河原を利用した小さなキャンプ場は家族連れでほぼ満杯、子供たちの歓声が響く。川のごろた石に座って握り飯を1個食った。出てくるのが遅かったのでもう昼の時刻。向こう岸の若葉に見惚れる。

キャンプする人で村の河原のあちらこちらが賑わっている。テントを張って、子供たちが魚を追いかけ水に入りともかく飛び跳ね、脇で親はお決まりのびーびーきゅーにいそしむどこでもの光景。何ゆえ日本中がびーびーきゅーなるや不可解。河原で牛肉たっぷしの芋煮会など、どうであろうか?

 

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河原はともかく、村の中は至って静か。ぽくりぽくり歩くがほとんど人に出会わない。この村には(現在は飯能市に合併)15年前ごろからよく遊びに来ていたが、そのころとあまり変わらない。ただ昔ながらのこぼちそうな商店や民家は 次第になくなり、そのかわり目障りなるカフェなるものが増えたように思う。

都会の人が遊びに来ると都会をそのまま運んで来ようとする、それがいかんのじゃないかと思う。おしゃれなカフェに行きたければ、表参道なのか代官山なのか知らないが、そっちへ行けばいい。そんなのは都会に腐るほどある。

素朴な村の光景よ! 変わってくれるな! と言いたいのだけれど、しかし一方ではこの村に住む人たちは素朴な村の光景がとても気に入ってるのかどうか、そこは考えどころだ。ここの若い人たちだっておしゃれなカフェやレストランが欲しい、のかも。

 

 

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 ぐるっと回って秩父に通ずる街道に出た。こちらはこの時期、車ぶんぶんバイクばりばり自転車しゃーしゃー、しかし道を歩く人影はない。車の音は聞こえないふりをしながら歩けば、目に入る光景は至って長閑、若い緑がことのほか美しい。

風は大昔からなんら変わることなく吹く、陽の影もなんら変わることはない、山の緑も変わらない、変わるのは人と人が作ったものだけ。これがありがたい。人が作らなかったものを見、人の言葉を受け流せば悠久はすぐそこに見えるかもしれないなあ。

 

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蕎麦屋があった。蕎麦屋と聞いては黙っているわけにいかないのではないか。川っ縁の変哲もないしもた屋風だが、人が入っていく。もしかしたらと思い入る。玄関の左手に座敷、右手に台所らしい構え、座敷に先客が5,6人。

入っても誰もいない、構わず座敷にドカンと腰を下ろす。待つ、誰も現れない、業を煮やして台所を覗くとひょろりとしたおっさんが長い顔を出した。「蕎麦!」と言う、先客を見回してどちらがお先で? と先に入った二人連れを優先。ごもっとも!

しばし待って蕎麦来る、青みがかった蕎麦が皿の簀子の上に載っている。啜る、旨い。盛蕎麦800円はちと高いなと思ったけれど、これなら許せるか。ず、ずずず~~と音を立てて啜る。周りは水を打ったように静か!?

蕎麦を無音で食うというのは信じられないが、きょうびはだれも音を立てない、自分だけだから恥ずかしい気もするが、な~~にこちとら日本人だい! と思う。しかもここは日本でもある。誰はばかることあろう、というのは時代遅れか?

 

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店の名前は「小物庵」とある。なるほど店主の腰は低かった(関係ないか?)。土日祝しか営業していないらしい。蕎麦の後にコーヒーが出た。少しぬるかったが旨かった。800円、むべなるかな。もしかして店主は脱サラ蕎麦屋かも、などと考た。

 

 

ぶらぶらと歩くのは至って気分のいいものだ。どこへ行こうがどこまで行こうが用事も目的もない。ただ今日中に帰宅すればいいだけだが、それだって別にどうしてもということではない。車の中に寝てもいいし、宿を見つけてもいい。タコの切れた糸!。

 

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ふらふら歩きまわって3時半ごろ、くたびれたのでそろそろ帰ろうかと思う。この村は川に沿って上流へ行ったり下流に戻ったりするしか手はない。両側が山だから行きようがない。下流の名栗川橋を渡る。

橋の上でお婆さんが腰を伸ばして流れを眺めていた。この橋は大正13年に作られた鉄筋コンクリートのアーチ橋で、埼玉県内最古、県の有形文化財である由。そう聞けばなにやら姿かたちも美しく見える、わな。

 

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また元の道に戻って上流の車まで帰るとする。

帰り道はいつもながらつまらない。

なるべく細いわき道に入って、自らを慰める。

 

(道端の小さき者たち)

 

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