doniti 日誌

( おもしろき こともある世を おもしろく)

越後信州駆巡ー塩沢ー

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忘日、早朝に無理して起きてみたが雨がしょぼしょぼ降っている。

あまつさえ昨夜は寝酒などきこし召して寝たのに眠れず、まだ酔(え)っている感じがする。ええ~いままよ、めんどくせえ寝てしまえ。で、今度起きてみたら7時、では出かけてみよう。

今度の旅行では密かに思い決めたことがある。曰く。

・貧乏旅行に耐えるべし。

・高速道路は使うべからず。

・地方の旨いものは貧乏にかかわらず食ってみるべし。

・夜の居酒屋は欠かすべからず、その際は貧乏の例外的措置を講ずべし。

 

 

早く首都圏、というか前橋を通過してしまいたい。田舎道を走るのは気持ちがいいが都会道は至って面白くない。ところが走ってみれば高崎線沿線の街々を通過するについてはバイパスがうまく案配され、大変良くできており感心した。

熊谷の郊外を大回りして通過し、伊勢崎の街をかすめ、高崎、前橋をはるかにやり過ごし、まあまあ順調に渋川に至る。ここまでくればシメたもの、あとはゆるゆる走ればいい。のだが、今までの勢いなのかそれとも性格なのか、なんだか追い立てられるような気分が抜けない。

 

 

たちまち沼田を通過して、いよいよ三国峠に係る。くねくね曲がった峠道に湯宿、猿ヶ京、法師などの温泉地の看板が行き過ぎていゆく。ではここらでひとっ風呂浴びていくか、などと余裕が持てれば言うことないが、峠にかかれば早く越えたい、早く平地に出たい、と全く貧乏根性、余裕がない。

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 しかし峠を埋め尽くす若葉は美しかった。標高が高いせいかようやく春になったような瑞々しい葉っぱども、どこを見回しても緑みどりみどり。そしてトンネルを抜けると新潟県、くねくね道がまっすぐになったが、勾配はきついらしい。

右手に苗場、かぐらなどのスキー場が現れ、ようやく越後湯沢の平地へ。「石打」の看板を見て懐かしさがこみあげてきた。昔、若かったころ、土曜午後から抜け出して何べんここへ来たかしれない。往時は茫々なれど。

 

 

両側の山並みが少しずつ左右に広がってゆき、遠くに残雪を抱いた薄青い山並みを見たとき、ああ! ようやく来たなあ! の感慨ひとしきり。街の中の国道をゆったりした気持ちで走る。

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塩沢の駅前、鈴木牧之記念館到着。空はあっけらかんと晴れ渡って眩しい。ともあれ記念館に入る。ざっと一渡り見て回る。『北越雪譜』の記述を思い出す。豪雪の年の屋根まで積もった雪を懸命に片づけている人々の写真が印象的。とんでもない雪の量が実感される。やはり写真の印象は生々しい。

しかし展示の文章など読んでいた日にゃあ、日が暮れる。さらりと流すようにして見る。いつも思うのだけれど折角こういう施設に入ってもじっくりと見たことがない。何でもかんでも急ぎ過ぎる。ほかに見学者は一組ほど。閑散。

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記念館の表通りは「牧之通り」と名付けて、かっての三国街道塩沢宿の街並みを再現した建物が並んでいる。歩いてみる。昔の建物を保存してあるのではなく、それぞれ新たに復元新築したらしい。木造なのかどうかも分からないが、街並みは美しい。

観光地にありがちな、お土産屋、喫茶処、飲食店などはほとんどなく、普通の商店街のように本屋、電気屋信用組合、美容室、医院、郵便局などが並んでいる。人通りは皆無と言ってよく、車もめったに通らない。イタク気に入ったなあ!

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もうお昼もだいぶ過ぎてしまったので、ここで昼飯にしようかと思い、記念館を出るとき、受付の色白で細面の越後美人に聞いて蕎麦屋に行ってみたら、今日は営業していないとのこと。南無さん、ついていない。

もう面倒なので、念願の八海山麓を目指し神社の蕎麦屋さんに行っちゃえ、と思う。行くのはいいのだけれど、気が急くのか腹が減ったからなのか、やたら先を急ぐ。ゆるゆる行こうぜ、と言い聞かせるのだが、ちっともゆうことを聞かない。

 

 

ああ! 八海山の麓の里なのだ。

あの懐かしい絵の里なんだゾ。