doniti 日誌

( おもしろき こともある世を おもしろく)

多摩川あっちこっち

f:id:donitia:20191028172659j:plain

 

 

忘日の土曜、日曜 若い先生方のレクチャーを受ける。

題して「多摩、水とくらし」。先生方はいずれもチャキチャキの30歳台、一人はお墓案内人、また一人は水質検査人、してまた一人はお祭り追及人。異分野の先生方が、多摩川の岸辺を巡ってそれぞれの分野の解説をする、という変わった野外授業。

 

 

1日目、土曜午後、「熊川」という五日市線の名も知らぬような駅から歩き始める。最初にお寺に入ってお墓案内人の解説。江戸時代この地を領した旗本の墓という小さな五輪の塔。墓の主の旗本の名前は無論知らないが、さすがに先生、よくこんな墓を見つけるものだと感心する。文献を渉猟し歩き回っているんだろうなあ、きっと。

次は熊川神社。お祭り追及人登場。祭神の「宇賀神」というのは穀物神で、弁才天と同一視されている人頭蛇身の奇妙な姿だそうだ。で、立て看板に「当神社は古来より神仏習合の神社です」と悪びれるところなく断ってある。それにしても不動明王が平成の世になってここに鎮座した、ともあり書いてあり、このような信仰が現代も脈々と続いているのに驚く。社屋は都指定文化財

f:id:donitia:20191028180011j:plain f:id:donitia:20191028180046j:plain

 

 

さて面倒くさい話はこれぐらいで、ということで次はもう酒蔵の見学、試飲だそうだ。先生方も早く飲みたいらしい。某酒蔵で女性の案内を聞いてから、お待ちかね、試飲。親指ほどのプラスチック容器にほんのちょっぴり、景気よくどぼどぼいきたいなあ!

説明の中で面白かったのは、明治時代にビールを醸そうとしてつくられた巨大な鍋(?)、結局採算が合わずビール造りは断念、鍋は他に譲られたそうだが巡り巡ってまたここに落ち着くことに。で、この酒蔵では平成になってからビール造りが始まったそうで、なにやら因縁話めいている。

f:id:donitia:20191028211052j:plain

 

f:id:donitia:20191028211117j:plain


 

当日はここで解散。一行の中に知り合いがいて、駅前でちくっと一杯、ということになり、ちくっとの積りがそのように積もらず、1杯100円のハイボールなる安酒を二人で10杯、安酒はいけませんなあ。飲み過ぎる!

 

 

 

さてさて翌日、日曜日、集合は青梅線宮の平駅、10:00。駅裏側、山の麓の石灰採石場跡に行く。説明は背の高い女性の水質検査人。多摩の奥の山は、ジュラ紀の付加体の石灰岩でできているのだそうで、この採石場は昭和40年ごろまで使われていた由。

そこで水質検査人は、やおら希硫酸を取り出してそこら辺の白い石にぶっかける。シュワシュワと泡立ってまぎれもなく石灰岩のカケラ。そこから少し離れた場所に当時使われていたという石灰岩を焼く窯場跡へ。雲が切れて10月の美しい空が現れた。

窯場跡はごろた石を積み上げ高さ15メートルほど。下の口から薪を積み上げ上から石灰岩を入れて焼いたのだそうだ。石灰岩は焼くと生石灰の粉になり、その粉に水を加えると消石灰になり熱を出す、なにやら化学記号が出てきたが、当然のことながらきれいに忘れてもうた。この先生は化学が専門らしい。 

 

f:id:donitia:20191028214656j:plain

 

 

また電車に乗って沢井駅下車。言わずと知れた澤乃井酒造があるところ。またまた飲ませる気だな、さては。ま、楽しみは後で、ということで裏山の澤乃井酒造、小澤家の墓地に行く。お墓案内人の解説。

 ”この墓地は、ほぼ小澤家の墓地であり、また村全体のものでした。小澤家は当地の名家として墓域は一番広く、また昔はここより上にはお墓を作らないことしていました。現在は用地が不足し、上の山肌を削ってそこに新しい墓地を作っていますが、小澤家が常に村全体の発展を考えてきましたので、村人も納得していたのでしょう。

多摩川の岸辺に遊歩道が設備されていますが、これも小澤家が中心になって作られたものですし、午後に行く対岸の寒山寺もそうです。この地を観光地として整備し、村の発展を図ったものです。”

 

f:id:donitia:20191029093730j:plain f:id:donitia:20191029093440j:plain

 

f:id:donitia:20191029093509j:plain


小澤家の墓域は一般の20倍くらい広そうだ。大きな墓石を中心にして両脇に塔と五輪塔がある。その隣に簡素な観音堂がありまたその隣に石仏などが並んだ一角がある。これらすべてが小澤家のものであり、またお堂は村全体のものでもあるという。 

 

そこから下に降りて今度は酒蔵の見学。中は暗くて写真は撮れないけれど、入口とそして秩父古生層から湧き出るトンネルだけを写した。このトンネルの水は硬水で辛口の酒を醸し、対岸の山から引いてきた水は超軟水で甘口用だそうだ。

蔵の案内は、小柄ながら目つきのしっかりした親父さんがこのような説明をしながら回ってくれたが、 かの水質検査人であるところの若き女性学者先生も同じような説明をしてくれたばかりでなく、きっちりと水質検査もしていた。それによれば、対岸からの仕込水は超軟水とのこと。

f:id:donitia:20191029100242j:plain f:id:donitia:20191029100309j:plain

 

f:id:donitia:20191029100432j:plain


 

お待ちかね、昼飯の時間。川っ縁の澤乃井ガーデンで食すことになっているが、その前に試飲。利き酒の建物で、普通の試飲用猪口の1/3ぐらいのに、一杯200円~500円、二杯目は100円、全部で15種類もある。

新酒を2杯飲む。一つは辛口、もう一つは甘口。同行の若い女性、お酒が強そうだからそう言ったら、ええ、好きですよ、主人ともっぱら日本酒、と。こういう女の人は、本当に強いから飲みっこなどしたら、ぶち負かされる。要注意!

川っ縁のテーブルで昼飯。飲食物持ち込みならぬ、ということで小さなおにぎりを買う。がしかし、悔しいから持参のコンビニおにぎりも知らん顔して食ってやった。一緒に利き酒した同行の女性たちは、おとなしくうどん、蕎麦など。

ガーデンの紅葉はまだ少し早い。紅葉らしい葉がほんのりと色づき始めている。台風やら大雨やらで多摩川はいまだ大増水、ここから眺める水面も笹濁りに濁ったままだ。本来はさらさらと澄んだ水が流れているはずだが、川相はまるで違う。

 

f:id:donitia:20191029102816j:plain

 

f:id:donitia:20191029102844j:plain

 

 

昼飯の後、対岸の寒山寺へ行く。お墓案内人の説明。寒山拾得寒山寺、もちろん対岸の崖っぷちだから小さいが、髑髏と椿の天上絵、寒山拾得の石柱レリーフ、これも小澤家の観光施設の一つ、だと。

多摩川は濁って流れが荒々しい。普段のやさしい流れは見られないけれど、ゆっくりと紅葉は進んでいくらしい。

 

 

f:id:donitia:20191029105514j:plain

 

f:id:donitia:20191029105538j:plain


 

そうして野外授業は終了、ここで解散。となれば、またガーデンに戻って飲まなければならぬ。同行の数名男女誘い合ってテーブルを囲んで酒盛り、というほどではなく、至ってささやかに、つつましく。

先生方も飲んでいる。合流して酔っ払いのたわごとを言い交し、この後会うこともないかもしれぬお互いの、2日間の一期一会。

 

f:id:donitia:20191029110450j:plain


 

途中駅で昨日の知り合いと下車、また飲んだ。

ほんにまあ、飲んだくれの2日間。

なあ~~にを、勉強したんだか?