doniti 日誌

( おもしろき こともある世を おもしろく)

八高線・再び(高麗川~生越)

 八高線のみぎひだり
      脚のむくまま気の向くままに

           烏が鳴くから帰ろかな ~~

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 

f:id:donitia:20200623144215p:plain

 

 

てなわけで、高麗川駅に9時ころ到着。八高線電車区間はここまで。ここから高崎までは電化されていないので、ブルンブルンのディーゼル車になる。電車の方はといえば、全部この先で90°ひん曲がって川越へ行ってしまう。

f:id:donitia:20200622162215j:plain

 

 八高線という路線名が既にして実態と合わないのだ。八王子~川越:電車 であり、高麗川~高崎:ディーゼルカー なのだから、電車区間を八越線ディーゼル区間高高線、とでもすべきなのだ。

 が、怖れるのは、「高麗川~高崎間は利用者少ないでぇ廃止にするべえ」という按排になること。八高線愛好者としては、それは困る、大いに困惑する。偉大なるローカル線は、少々赤字であっても残してほしい。日本中からローカル線が姿を消している時代だから、頼むよほんとにィ、廃止にしないでくれよ。

 

 

 それはさておき、線路際を歩いて太平洋セメントへの引き込み線跡へ行ってみた。川越線がカーブする区間は、路床に夏草ワアワアだが、線路だった面影は残っている。そこから先は散歩道として整備されていた。

f:id:donitia:20200622182723j:plain

 

 かっては線路の亡骸が草に埋もれ、哀れを誘う土手に過ぎなかったのだが、このように整備されれば、住民はそこを散歩し、そのうえ両脇に花などを植えたりする。車のいない道は、どこでも格好の散策路になる。

f:id:donitia:20200622183025j:plain

f:id:donitia:20200622183117j:plain f:id:donitia:20200622183148j:plain


 太平洋セメントの敷地に入る手前は、さすがに「昔は鉄道だった、その面影ば残さにゃあかんぞなもし」ということで、レールの形が埋め込まれていた。せ~んろは続くうよ、どこまでも~~、野ぉを越え~、。。。いや、あの先まで

f:id:donitia:20200622183829j:plain

 


 
 太平洋セメントのプラントは、一見廃墟のように見える。日曜日で操業していないらしいから、よけにその感じが強い。セメント会社のプラントは何処もこんな感じなのかなあ。・・・かってに廃墟にするな! (by 太平洋セメント

f:id:donitia:20200622205502j:plain

f:id:donitia:20200622205529j:plain

 

 それにしても、秩父武甲山からここまで、延々、山の中をベルトコンベアで石灰を運んでいるのだ、と聞いた時はびっくりこいた。以前、高麗川を渡っているコンベアの橋を見たことがある。凄いことをやっちまうもんだなあ! 人間て!      (武甲鉱業株式会社のウェブサイトから絵とキャプションをお借りした。 )

f:id:donitia:20200622190329p:plain

武甲鉱山と太平洋セメント社埼玉工場を結ぶわが国最長級の地中式長距離ベルトコンベヤ(Y ルート)です。総延長23.4km、その97% を地下に設置、5 地点に積換所を設け、スチールコードベルトコンベヤ6 基を繋いだもの。 

 

 

  ところで、今回いろんな場所で”にゃ~ご”に出会った。いつもは目にしたとたんに、さっと姿を隠してしまうことが多いのだが、みんな人なつっこい奴ばかりだったような気がする。「人間次第なのよ、私たちもともと友好的じゃにゃあの」

f:id:donitia:20200622212333j:plain

廃線引き込み線で出会った色白の美人。退屈してるんだから、遊んでくれよ、などと言いつつ、こいつは寄ってきた。

 

f:id:donitia:20200622211417j:plain f:id:donitia:20200622211805j:plain

出雲伊波比神社の社務所の猫           生越駅近くで出会った。飼い猫らしい。 

 

 猫をやたらに撫でたりするな、ということを前回、エラク気位の高い猫にバシッと手を殴られて教えられたが、猫は面白い。にゃ~ごと呼びかけると、目を細めたりする。もっと会話したいが、まあだいたいは知らんぷり顔されるがいいとこ。  

  

 

  閑話休題(翻訳=つまらんことをうだうだ言ってないで、先へ進め!)。太平洋セメントの広大な敷地脇の細道を巡って 畑の中をゆく。今回は猫と遊んじまったので、道っ端の花はあまり見つけることができなかった。

 

f:id:donitia:20200622234456j:plain

 これは最近教えてもらった「ナワシロイチゴ」ではあるまいか。できる場所ではこんなに豊作になっていたんだなあ、と思う。恒例により2,3個口へポイッしてみたけれど、大丈夫、死ななかった。

 

f:id:donitia:20200622234824j:plain

 栗畑が多かったので自然に目に入った。まだ6月、クリの白い花がようやく下火になったばかりというのに、もうイガの赤ん坊ができているにゃあ驚いた。こりゃあ、イガい!(オヤジなので素直に。。。) 

 

 

 街中から少し離れた田舎道を歩くのが無性に好きだ。これは郷愁のなせる症状かもしれないが、昔を思い出す、甘っちょろい郷愁だ、と言われようが何だろうが、好きなんだから仕方がない。先なかりしかば、好きなことをやる!

f:id:donitia:20200623104517j:plain

 

 

 狭山市の西のはずれっこに多和目天神橋という、今どき珍しい木造の橋がある。車ダメ。人、犬、猫よ~~し。の至って小さな橋だが、辺りの草が刈り取られて、散歩道になっているようだ。車を締め出せば、ヒトは歩く。

f:id:donitia:20200623105138j:plain


 

  向こう岸の森の上に城西大学の建物が見える。鬼のように静かな環境で勉学にはもってこいかもしれないが、若い衆のエレルギーにとってどうか。”コンビニねえ、ネットカフェねえ、あるのは田んぼと草木だけ、オラ、東京さ行くだあ”

f:id:donitia:20200623105506j:plain

 

 

  大学の隣は丘陵上の戸建て団地。とは言え、ほとんど人の姿なし。団地と背中合わせに実篤先生の「新しき村」があるはずだが、その入り口が分からない。グーグルに相談しても、「わしゃ知らんがな」と澄ましている。

 仕方がないから、たまたま見つけた人に聞く。「わしも同じ方へ行くんだっけが、付いてこうし。『村』に何人暮らしているだか知らねえが、もう百年にもなるだってよ」。この人は『村』との付き合いは無いらしい。

 

 

 田んぼのあぜ道を渡って、『村』の裏口でこの人と別れ、中へ入る。以前来たときは表玄関からだったが、今回は勝手口から失礼します。『村』の中心に行くあいだ、ポツンぽつんと古い崩れそうな家が見える。

 中心地は以前のとおりで変わっていなかった。ただ、建物だけが歳老い、うらぶれて、トタンの屋根の 赤錆だけが目立つ。村民の芸術活動の拠点、ギャラリーにも入ってみたが、展示物も変わっていないように見えた。

f:id:donitia:20200623111911j:plain

 

f:id:donitia:20200623112354j:plain

 

f:id:donitia:20200623112421j:plain

f:id:donitia:20200623112455j:plain f:id:donitia:20200623112528j:plain



  売店があったので覗いてみた。梅サワーの瓶と少しの野菜が並んでいた。奥に食堂のテーブルがあり、何か料理の香りがする。その後、若い女性がふたり、談笑しながら出てきたが、ここの住民だろうか? 見学者だろうか? 住民なら希望の光だな。

f:id:donitia:20200623113046j:plain

  

  木陰に壊れそうな東屋があったので、ここで休憩させてもらう。見まわしたところ、村には5,6軒のこぼちそうな古い家屋と、これまた古いギャラリーと売店だけのようだ。新生するものは何もないように見える。

f:id:donitia:20200623130102j:plain f:id:donitia:20200623130128j:plain

  

 原始共産制に似た理想郷、”一人はみんなのために、みんなは一人のために”は、今消えていこうとしているらしい。東屋の周りの葉っぱをそよ風が揺らして通り抜けたが、まるで村を囲む木々の上空を、冷たい風がひゅーひゅーと吹き抜けていくように思えた。きゃさり~~ん!!

 

f:id:donitia:20200623130635j:plain

 

 

  『村』から出て丘陵の端っこの緩やかな起伏を歩く。これまた誰もいない、嬉しくなるような野道、蛇と熊さえ出なけりゃこっちのもの。八高線に出会って踏切を超え、毛呂山町に入る。

f:id:donitia:20200623131333j:plain


 

 草地と森を抜けて毛呂山町を見渡す。右手の、平地にこつ然と現れたようなビル群は埼玉医大関係機関、左手のこんもりは、これから向かう平地の中の、ぽつんなる丘陵。なんとも長閑な街の景観。

f:id:donitia:20200623131723j:plain f:id:donitia:20200623131800j:plain



  長閑な眺めだけれど、一面縹緲たる休耕田の”原野”だ。「美田、たちまち化して荒野となる」。。。ご先祖様は、どれほどの辛苦と骨のきしむ力とを注ぎ込んだだろうか、それを思うと涙が出る(出なかったけど、ちらりと思う)

f:id:donitia:20200623132915j:plain

 

 

  こんもりには、出雲伊波比(いわい)神社が鎮まっている。主祭神は大國主とか、ぽつんと、なんで出雲? 神社のいわれ由緒はさておき、教育委員会の看板には、11月に催される流鏑馬の説明。流鏑馬ロードはきれいに手入れされていた。

f:id:donitia:20200623135529j:plain f:id:donitia:20200623135700j:plain

f:id:donitia:20200623135558j:plain


 

 

 こんもりの坂道を下って町の中へ。なんだかまた足首が痛くなった。歳は取りたくねえ。足が痛えの、膝がどうしたの、耳がどこかに行ったの、歯がなくなったの。どうも宿痾のようである。南無さん! 足だけはなんとかならんか。

 街の中を、痛い足を引きずったりなだめたり、どこをどう歩いたか、越生高校の敷地に迷い込んだ。幸い今日は日曜日、突っ切って生越駅まで広がる住宅団地の中、真っ直ぐ見通せる道は先が遠い。

 この団地を縦断するに四苦八苦、といっても足が痛いだけで四苦も八苦もないけれど、とにかく剣呑だ。ようやく団地の北端、「山吹の郷」に到着。いやはや、来たにゃあ来たけんど、ここに何があるというんだ?

 

 

 「史跡・山吹の郷」に入ってみれば、ぽつんと復元水車小屋一つ。とその奥に階段。むむ! これを登ったら、何かいいものがあるんだろうか? 「よしゃあいいに、足が痛いんなら黙って帰りゃあいいによ」

f:id:donitia:20200623142423j:plain f:id:donitia:20200623142454j:plain


 登る! はあはあ、ぜ~ぜ~、足がぎくり! ゾンビみたいに手すりにつかまって、一歩また一歩。。。。登った!! がら~ん。あんにもねえだよ! 樹木を切り払った起伏ある広場に、越生町の地図だけ、ポツン!

f:id:donitia:20200623143134j:plain

 


 生越の街並みが見下せる、ただこれだけ。階段を下りながら考えた。階段の周りに山吹の枝が茂っている。要するに階段を登りながら山吹の花を観賞せよ、だったのだ。花の無い今、骨折り損はくたびれても儲け無し! チョンチョン!

f:id:donitia:20200623143600j:plain

 

 

 あとは生越駅近くの蕎麦屋「よしひろ」だけが楽しみ。高麗川蕎麦屋の時のように、肩透かしを食っちゃあならぬ。念入りにグーグルに相談したが、たぶん大丈夫らしい。ちくしょう、ゆっくりするゾ。

 

 なんとかかんとか、「よしひろ」到着。ふう~~、ひとまずは、えかった、えかった。店構えも変わりなく、お客も今余りいなそうだし、あとは夕方になろうが夜になろうが、ゆっくりしていればいい。

f:id:donitia:20200623144639j:plain

 

 盛り蕎麦、冷酒・久保田(千寿)一合。冷酒来る。小さめのコップで、受け皿に少しこぼして(こぼさなくていいってば、コップを大きくせえよ)。きれいな青い小丼に、バイガイとトビッコの和え物すこし。ぐびり、むしゃむしゃ、旨いねえ!

 蕎麦来る。麺太め、しこしこして噛むとほんのり蕎麦の香り、かな。量が多いから腹にたまりそうだけれど、好きなものだからなんぼでも入る。

f:id:donitia:20200623145617j:plain

 

 ふと前を見ると、表の枝垂れ梅の、きれいに枝垂れた枝がゆらゆら。窓枠で切り取った一幅の絵のごとし。ぐびり、つるつる、そして窓の外。うむうむ、これは又、至福の時間じゃねえだか。ずっとここにこうしていてもええだ。

f:id:donitia:20200623145830j:plain




  

  生越駅は駅舎を取っ払って工事中。高麗川行き30分待ち。

 向こうのホームの東武電車と、わが八高線のブルブルカー。

 ここまで、28600歩(×0.6=17㎞換算)

f:id:donitia:20200623150509j:plain

f:id:donitia:20200623150529j:plain

 

 

 帰宅後、チュウ2杯と梅干し一個。

 夢も見ないで、寝たでやんす。

 

f:id:donitia:20200623150747j:plain