中断していたサークル活動がやっとこさ再開。
このコース、以前にここへ書いたかもしれないが、
忘日、古い企画のほこりを払って、今回は案内役。
青梅駅から旧青梅街道を西へと辿って、沢井まで歩いてみっか、という企画だけれど、なにしろコロナのため、遅れた出前よりもっともっと伸び切って、すっかり冷めてしまった。ともあれ、当日青梅駅に9名集合。
今回は、ドイツから一時帰国しているという日本人女性が初参加、けれど名前がドイツ語のカタカナ訳だから年寄りには覚えにくい。日本名の〇子さんでもよろしいか、どうぞどうぞ、なんでも結構、ということで安心した。
最初は青梅の街中、つまり昔の青梅宿を歩く。古の宿場の面影を残す伝統的な商家が通りのところどころに残っている。そのうちの一軒、旧稲葉家に立ち寄る。蔵造の薄暗い店舗に入ると、案内役のおばさんがいて質問に答えてくれる。
がやがやと質問し、店のつくりを眺めたり、どっしりした車櫃に驚いたり。圧巻は店の裏手に残る3階建ての蔵、修理を重ねているのだろう、壁の白さが目に眩しいほどだ。店は江戸時代、この蔵は明治初年の建築だそうだ。都指定文化財。
まっすぐ西へ延びる宿場通りの端に金剛寺というお寺がある。街の中では古刹だというが、その境内に一本の梅の木があって、その梅はいつまでたっても熟さず青いままなので、それで青梅という地名ができたという。うむ!
それはともかくとして、枝垂れ桜や楓の木が配置された境内のたたずまいが森厳の気に満ちて好ましい。一行の皆が境内をうろうろ歩き、なかには苔むした石碑の、蛇がのたくったような文字を、ああでもないこうでもないと読み取ろうとする者あり。
戻って、街道の突き当りに陣屋跡。八王子代官所の出張所みたいなものだろう。今は忍ぶよすがは何もないが、ただ陣屋を守護していたという熊野神社が残っている。神様は、押し潰してしまったり、ほいっと捨てたり、それはできないのだろう。
ここから先は裏宿。江戸後期に宿場に編入された地域だという。のんびりした道路だから、のんびり歩く。年寄りが多いから当然そうなる。裏側の丘陵に新緑が萌え出て、柔らかそうな優しい緑が、もわもわ泡のように盛り上がって実にきれいだ。
さて分かれて細い旧街道道に入る。だらだら坂を下って多摩川の岸近くの臨川庭園へ。青梅の代議士さんの別邸だったという日本庭園だ。梅が散り、桜も葉桜となり、しかしミツバツツジの花や芽吹いたばかりのモミジの葉が美しい。ここで昼食。
庭園の木々はすべて若葉が芽吹き、その青葉に匂いがあるのかどうか知らないが、見ているとむせ返るような気がする。ときおり雲を切り裂いて陽が差込むと 、若々しい緑が一斉に照り映え、小躍りするようにきらきらと輝く。
午後からも、車道の現街道に並行している山側の旧街道の細道を歩く。紫に霞む遠くの山、両側のつつましい民家、花桃やミツバツツジが咲き、道端に鮮やかなスミレ、シャガ、紫花菜。ほぼまっすぐな道はいかにも昔の街道らしい。いやが上にものんびりする。
いったん現街道に出て、女性陣はそこの「さけまんじゅう」を買った。男は誰も関心がない。「まんじゅう」だからなのか、それとも買い物は女性の特技(?)だからなのか、見事に二分されておかしかった。
しばらく現街道を歩いて、また山側の細道に入る。先ほどとおなじような道が続く。旧街道を広げるにつき、家のない場所では容赦なく旧街道を踏みつぶして現街道として広げ、家があった場所は旧街道のままなのだろう。それがよくわかる。
この道の突き当り、海禅寺でおやつ大休憩、皆口をもぐもぐ。この地の豪族、三田氏ゆかりの寺で、三田氏四代の供養塔もある。境域は都の指定史跡。境内は鮮やかな花に埋もれ、どこかで鶯が下手な声で啼き、日差しが温い。
このあと道は山側にぐっと食い込んでいく。少し先に山からの沢があり、その沢を渡るために流れの細い上流へ行くのだ。登りになるのできつい。案内役が遅れてしまう。ひーひーはあはあなのだが、ひた隠しにして知らんぷりして橋を渡った。
橋の向こう側は、鎌倉街道の一つと言われる、山から下る自動車道、それが下って現青梅街道に突き当たる。その辺りから対岸にかけて、三田氏と北条氏輝が戦った軍畑。戦死者の鎧、兜を埋めて供養したという鎧塚がある。
地図では、ここから多摩川の川っぷちを歩くことになっているが、台風で遊歩道がダメになり歩けない。万止むを得なければ山側の旧街道をそのまま歩く。ゴールの沢井駅まではあとほんの少し、いったれや! と自分に言い聞かす。
駅近くに、江戸時代に名主役を務めた福島家が茅葺屋根もゆかしく、現在に残されている。説明板によれば、多摩地方の山から材木を筏に組んで江戸まで運んだ、筏師の惣代を務めた家だそうだ。現在も人が住んでいるという。
さて、今回はここで終了、距離は約12㎞。
案内役がへばってどうすんだ!
いやいや歳には勝てまへんなあ。
・・・
で、解散した後、希望者がこっそり澤井酒造の澤井園に繰り込んだ。訊酒蔵に入って一杯100円の酒、数種類をぶっ食らう。平日だからハイカーもほとんどいない。そのあと多摩川の縁で、せせらぎを耳に更にぶっ食らった。
園の多摩川が見える東屋に全員集合。飲んべオヤジと紅一点。澄んだ水が静かに流れ、若葉の枝が川にせり出して、川面の風にそよいでいる。長い日がだんだん傾いたが、オヤジの饗宴はなかなか終わらない。