doniti 日誌

( おもしろき こともある世を おもしろく)

平井川の岸辺

f:id:donitia:20210916081226j:plain

 

 

 あの鬼のような日中の灼熱も和らぎ、だいぶ涼しい風が吹くらしい。

 で、散歩に行く。久しぶりに平井川の岸辺でも歩こうか。平井川は、その源が日の出町の山中「つるつる温泉」辺りにあり、さらさら流れ下って多摩川に合流する。変哲もない小さな川だが、春は岸辺の桜と里を埋める桃などの花がとても美しい。

 平井川が多摩川に合流する地点まではいつもの土手道。その土手の変化は彼岸花が咲いていること。緑の夏草の中に真っ赤な花が点綴し、とてもよく目立つ。花の形はなにやら妖しげでそのくせ美しい。

f:id:donitia:20210916100709j:plain

 

 

 河川敷の公園、甘いおやつで休憩。曇っていた空に隙間ができ、柔らかな陽が差してきた。緑の芝草を散歩の人が歩く、走る人もいる。少し風があって汗が引いていく。背後で咲いている萩が風に揺れる。赤い萩の中に白い花が混じっていた。

f:id:donitia:20210916101938j:plain

 

 

 多摩川に架かる橋を渡って平井川の岸辺に出た。ここまでおよそ6㎞、さてどこまで歩けるか。平井川の河原は、無遠慮に茫々と伸び放題の夏草に覆われ、水面は夏草の中をさらさらと流れている。しかし好き勝手に繁茂している草どもも、遠からず葉を落とし、枯そぼち、諸行無常の姿に変わるのだろう。容赦なき時の流れを思う。

f:id:donitia:20210916105544j:plain

 

 

 川沿いの土手に桜並木が続く。黄葉した葉がちらちらと風に舞っている。花水木などもそうだと思うが、春いち早く葉を出したから、秋もいち早く散らなきゃ、と思うのだろうか。そうだとすれば、いや、律義なことである。

 ここにもやはり彼岸花の群落。そこここで、ここを先途と咲き誇り、ぴかりと視線を射る。我がでたらめ歳時記によれば、9月は彼岸花、10月に入ったとたんに金木犀、11月は山茶花なのだが、金木犀がもう咲いているのはどうしたことだろう。

f:id:donitia:20210916104137j:plain

 

 

 川沿いの小さな公園に来たので、池の上の東屋で握り飯を齧る。風がさわさわと吹いて気持ちがいい。蝉の声は沈黙して、水の流れがかすかに聞こえる。向こうのベンチの人影は動かない。夏草はここでもわがもの顔。

f:id:donitia:20210916112328j:plain

 

 

 川面が見える場所でぼんやりと佇む。向こう岸の草の陰でキラリキラリと光るものがある。ここからは見えないけれど、魚の群れらしい。ああ、あれを捕まえたい! たちまち少年の夏に時間が飛んだ。

 捕まえてどうするでもない、魚は小さいから旨くもない。ただ捕まえたいだけで、逃げる魚を網に入れた瞬間の、どきどきが鮮やかによみがえってくる。いま、少年は魚を捕まえないのだろうか、そんな事あほらしくって! なのだろうか。

f:id:donitia:20210916113533j:plain

 

 

 中流域に入ってくると土手の道は草ぼうぼうで通せんぼ状態。わずか2,30cmの踏み跡がかすかに見える。まむぞう(マムシ)が昼寝をしていないだろうか。うっかり踏んでガシガシかまれるのは困る。半ズボンで脛は無防備なのだ。

 脛に草がばらばら当たっているが、どうやら、まむぞうはいないらしい。その代わりなのか、川岸にカカシが立っている。何のためだろう、どう考えても解らない。密猟者の監視じゃないよなあ。単なる遊び心かなあ。

f:id:donitia:20210916114617j:plain

 

  

 今日見たいろんな花。

f:id:donitia:20210916115748j:plain f:id:donitia:20210916115816j:plain

f:id:donitia:20210916120012j:plain f:id:donitia:20210916120042j:plain



 上流域に差し掛かって、多摩山地の山影が青く霞んで見えてきた。手前の山は緑、その奥が水色(って、水に色があるのか?)、もっと奥が白っぽい青。重畳と重なり奥へ奥へ連なる。もっと奥へと誘いこまれるように。

f:id:donitia:20210916120547j:plain



 時刻は3時を回った。だいぶ歩いたので、今日はこの辺にしておこうか。岸辺に里が開けて、畑の畔に彼岸花の列、その先にコスモスの群落、丘陵の裾に明るい家々、緑の丘陵がそれを取り囲んでいる。

 ここは、春、枝垂れ桜が薄紅の花を垂らし、赤や白の花桃が鮮やかに咲き、連翹が縁どる、夢のような里だった。いま花はそれなりの季節だけれど、その佇まいはやはり美しいと思う。眠りにつく前の陽光。

f:id:donitia:20210916121307j:plain

 

 

 川岸を離れ、五日市線の駅に向かう。

 4時、車内は高校生がいっぱい。

 久しぶりに晴れて、気持ちがよかった。16.9㎞。

 

f:id:donitia:20210916121534j:plain

 

 次に歩くときは、彼岸花はもう見られないだろうな。