doniti 日誌

( おもしろき こともある世を おもしろく)

歩いたことがない道、また

 正月は、酒ぶっくらいのゴロチャラ。

 結果、腹出た。・・・ふ~む、歩かねばならぬ。

 

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 八高線箱根ヶ崎駅下車。ここは東京の「市」ではない、「町」なのだ。すなわち東京都西多摩郡瑞穂町。江戸時代、石灰輸送を担う青梅街道の箱根ヶ崎は宿駅としてに賑わって、その面影は駅東側の古い家並みに今とどまる。天気晴朗なれど風冷たし。

 

 

 下車した駅の西側は茫漠たる畑地が広がっているが、駅に接する一部が最近宅地開発され、新しい家が建ち始めている。これを見て、よそ者無責任の自分は”残念だ”などとほざくが、ほんとに、我ながらえ~~かげんにせ~よ。

 開発地を抜けると広々と畑地が広がって、行く手に16号線バイパスが通うせんぼしている。車ぶんぶんと切れ目なく、両側4車線で幅広い。脇からおっさんがやってきてやおら横断の気配。お互い顔を見合わせニヤリ。車が途切れた一瞬、それっ!いまだ! おっさんの後を、とっとこ無事横断、ありがとうと言うとふにゃと言って畑に消えた。

 

 

 せっかくだからこの畑のど真ん中を歩こうと思い、入り込んでみたが、霜柱が溶け泥濘の道。落ち葉を踏んだつもりが不気味にずるりと靴が沈む。いやはや、これでは靴も脛も泥まみれ必至、ほうほうの態で抜け出した。

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 いったん街道に出たものの、やはり面白くない。畑の方に入る舗装道があったのでまた入ってみると、思いもかけぬ杉林の道があった。日影に先日の雪が残っていて、異郷に紛れ込んだかのような気分、お~し、これだこれだ、こういう道がいい。

 だが、なぜ突然杉林の細道なんだろう? 持参の地図を見ると、このあたりが狭山茶で有名な狭山台地の西端に当たるらしい。そういえば、八高線でこの台地を越えるとき、線路の両側は雑木林だったことを思い出した。その中をいま歩いているのだろう。

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 杉林を抜けたら突然畑のど真ん中の、細い砂利道となった。砂利だから霜柱がない。よろしい、畑の道はこうでなくちゃ。真っ直ぐず~っと向こうまで続いている。陽の方向を勘案すると北に向かっているようだ。ますますよろしい。

 こんな車のいない細道をどこまでも北へ向かって、飯能市へ抜けられるかが今日のテーマ。どうも思惑通りの展開ではあるまいか。そうなると少し安心して、渇いた草地にどっかと腰を下ろしておやつを食う。

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 最近想うところがある。それは、あらゆる局面で楽に着け! ということである。要するに、何でも楽な方へ楽な方へと流れることにしたのだ。楽の反対は苦である。だから苦を避けるべく務めることにした。

 考えるまでもなく、残り時間が少ない。少ない残り時間に苦に対処するのは大損である。残り時間に苦を抱え込むなどまっぴら、だから行動の面でも苦を避け楽へは当然だが、ときに昔の苦い経験が思い浮かべば、ぶんぶんと頭を振ってどこかに振り払い、楽しかった思い出を探し出す。行動も思惑も苦を避け楽へ。

 そんなに楽なことばかり考えていいのか! いいのだ! たうぜんである。人生は重き荷を負い遠き道を歩むが如し、なんて誰が言ったのだ。重い荷は放り投げろ、遠き道は近道を探せ。つらい経験は振り払い、楽しきことばかり思いだす。いいではないか。

 

 

 

 さて、そうして歩いていったらベコがいた。彼らも楽そうにしている。早速わが想いを実践しているらしい。というか、もしかして何も考えてないか、こいつら。まあ、何か考えたって考えなくたって、ベコの日常は変わらんだろうから、それでいい。

 近寄っていくと、「あんだよ、あにする気だ、まったりしてるんだから邪魔すんじゃねえよ、あっち行け、シッシッ」と言って暗い目を不審に曇らせた。もう一匹は「あら写真、撮るの。美人に写さないと承知しないわよ」と言った。

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 牛にグッドバイして車の道に突き当たった。このあたりは青梅市と瑞穂町の境、道を突っ切って更に行くと集落があり、なおずんずん進んで外環道の青梅ジャンクション下を通り抜けた。

 その先はきちんと方形に区画された畑が並んで、広々と空が開ける。広い空は気分がいいなあ! やはりちまちまと部屋に籠るより大空の下がいい。朝晴れていた空に雲が広がっていささかうそ寒い。道端の、オオイヌノフグリは萎んでいるが、ホトケノザが健気に赤い花を持ち上げていた。

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 どしどし歩いて行って、緩やかな坂を下ると青梅市の東端の住宅が並ぶ。ここを東へちょっと行けば八高線金子駅、もしくたびれたらそこへ逃げようと思っていたが、まだ大丈夫そうなので、正面の丘陵を越える気になった。

 丘陵の坂に取り掛かると病院と高齢者施設、更にその先にも同じような病院と施設がある。奥の病院まで舗装の緩やかな登りだが、途中ちょっと息が切れた。しかし100mも登ったかどうか。そして舗装道は行き止まって、丘陵の山道に繋がった。「今井林道」の看板がある。つまるところ整備されていない、自己責任で気をつけろ、と。

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 さあ、これからいよいよ山道だぞ、気合を入れろ! だが気合を入れるほどの坂道ではなかった。ちょっと上っただけで、あとは平たんであるらしかった。なんだか拍子抜けである。・・・きつい山道を苦労して・・・いやそれは止めたんだっけ。f:id:donitia:20220116170757j:plain

 

 

 分岐点に案内板があり、「左:七国山ハイキングコース」で、こちらを行けばいったん丘陵の谷に入りてまた昇り返しになるようだ。「右:尾根道コース」とあり、こちらが断然楽そうだ。

 早速わが想いを実践すべく、楽な右コースに進路を取る。登りも下りもしない平坦な道がしばらく続く。葉を落としつくした林の道はとても明るい。ビビりだから熊ぞうとマムぞうが怖いが、季節柄どちらもお休みのようだから安心だ。

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 その後、だらだらと緩やかな下り道がだいぶ長く続いた。下りとなれば怖いものなし、矢でも鉄砲でもという気分になる。この分だとちょっとしたハイキング位できそうだな、などと不遜にも増長満してみた。

 この点はしかし、こんなに登坂ダメ男になるとは思いもよらなかったなあ! ついこの間までは(いつのこの間だよ! )、体力も敏捷性にも自信があったのになあ、あっという間だったよなあ。なむなむ、それは考えないことにしよう。

 

 

 ついに尾根道を踏破、40分ほどの楽々ハイキング。降りたところは飯能市の郊外、こじんまりした神社があったので、ここで昼飯と行くか。拝殿の裏手の日当たりの良い場所に座る。小鳥が2羽、写真したいけれど、何しろ動きがめっぽう速い。即諦め。

 小さいのはメジロだ。枝から地上に降りてちょんちょん突つき歩く。もう1羽は、胸から腹が明るい茶色、ジョウビタキなのかなあ。メジロよりだいぶ大きい。地上を歩いて餌を探す風でもないようで、そして逃げた。

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 飯能市街地が見えてきた。この下の入間川を渡れば住宅地になる。こうなると本日はもう終わったようなもの、案外あっけなかった。当初は丘陵越えなんて、と若干ビビったが、赤ちゃんだって超えそうな楽な山道だったのが幸いだった。

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 市街地を歩くのはおもろない。知らない街でもないので、よけい車にまみれて歩くのは嫌だ。俯いて黙々と歩く。西武線の線路を越え、八高線の線路に沿って東飯能駅を目指す。駅近くの蕎麦屋に立ち寄りたいが、休みだろう。もう帰ろう。

 

 

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 東飯能駅到着:3:00

 今日はホトケノザの花を見つけた。これからが寒いが春はひっそり近づいている。

 総歩行距離:16.2㎞。楽ちんな歩きだった。

 これからも楽ちんを目指して。