doniti 日誌

( おもしろき こともある世を おもしろく)

名栗村如何に

余りにも、あぢ~、あぢ~。。。で、八高線一回休み。

ならば、名栗村(現在は飯能市)は? 

 

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  名栗川(入間川)の段丘に、か細く寄り添う谷間の集落。航空写真を見れば一目瞭然、なんちゅう山、また山。秩父へ抜ける峠はあるものの、余りに急峻にして細道、慣れないとやや怖い、ということもあって、いわばどん詰まりの、しかし愛しき里。

 

 真ん中あたりの「鳥居観音」駐車場、10:30ころ、降りたってすぐに感じた。風が青い。ふむふむ、お~し、よし、気持ちがいいではないか。やはり、周り中が山、木、緑だと、空気も爽やかになるのだなあ!

 鳥居観音の本堂をパチリしたはずだが、無い! 写したつもりでベンチで一服しただけか! いよいよ来たぞ、ボケが。ともかく麓の本堂ばかりでなく、頭上の峰に様々な施設が顔をのぞかせている。これを、個人が造ったのだというから驚き、宗教の力は絶大なりしかな。あそこへ登る!? うんにゃ、くたびれるから嫌じゃ。

 

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 ここから、右岸を下ってまずは有馬ダム方向へ行ってみっか。街道を避けて、川沿いの細道を歩く。有馬ダム方向の分岐の擁壁に、目がぱちくりするようなすごい壁画。「武州世直し一揆」がテーマだとか。世直し、いいなあ、今の世も直してくれい。

 傍らに看板。1866年、貧に窮した名栗村の農民を中心にして、コメの支給、借金証文破棄などを求め、武蔵国農民10万人が各地で打毀し等を行い、騒動は7日間続いた、と。明治改元2年前、あと少しで世の中がらりだったけど、そんな待てやせんぞな。

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 少し上ると高台の広場。名栗村の下(しも)半分がよく見える。なにか工事中で、なにやかや観光施設がこれからできるらしい。物産販売所だけがぽつんと開業していた。客がいないから店番のお姉さんも暇そう。

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 日帰り温泉施設「さわらびの湯」がある。道を聞くふりをしてちょっと覗いてみたが、こちらも暇そう。名栗村の良さは、開発されていない素朴な村のたたずまいに惹かれる人が多いと思う。ありきたりの観光施設の建設は如何なものか?

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  これには、ちょっとほのぼのさせられたね。「なぐりづえ」。登山客へのサービスなんだろうけれど、ちょっとした心遣いも垣間見えのの、ふっとするユーモアも感じられのの、ほかではあまり見ないな。”この棒で人の頭を殴ってはいかんぞなもし”

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  ここから有馬ダムへは又坂道を上る。これが結構傾斜が急なんだわ。は~は~、ぜいぜい。何回も立ち止まって、道っ端の草を見るふりして、休む! 誰も見てないんだから”ふり”はせんでもよかとじゃないですか。ま、沽券もあるでよ。

 

 

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 花はあまり見かけなくなったが、木の実が。これは「ナワシロイチゴ」じゃないでしょうか? でも自信はなかとですよ。”道っ端の木の実は片っ端から口に入れよ”と命令されているので、2,3粒ポイ。酸っぱくてほんのり甘い。

 

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 別な場所で見つけた。実の色はもう少し黄色かった。ヤマモモと言われるやつか? それとも木苺の類か? 正体が分からないのでビビったけれど、死ぬ気で、2,3粒、口にポイ。甘くも酸っぱくもない。なんだか気の抜けたような味ともいえぬ味。

 それになんだか、実が糸を引く。こりゃあ、今晩あたり腹を壊して一巻の終わりか。でもまあ毒ならば、苦いとか、変な臭いだとか、それらしき何ものかが感じられるだろうと思うが、腑抜けた味だけでその兆候はないようだ。

 

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  ドクダミと一緒に咲いていた。ので、「ヤエドクダミ」かな。なかなかきれいな花。普通のドクダミの花も真っ白くてきれいだ、なのにあまり好かれない(と思う)。理由はあの葉っぱの匂い。「ドクダミ荘の青春」。貧乏で若くて。ああ!

 

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 手持ちの図鑑にはなく、どこかで目にしたような気がしてずっと探していたが、やっと現物に会いましてん。「テイカカズラ」。藤原定家ちゅうお人は知りまへんが、面白い花形と違いまっか。ちょっと紙の風車みたいでんなあ。

 

 

 なんて言いながら、ぜ~ぜ~、ひ~ひ~、有馬ダムへ到着。笹濁りの水がとろんと溜まっている。この水は洪水対策、麓の飯能市の農業用水、その他に使われるそうだ。地元の名栗村には田んぼもないから、こんなもん有っても無くても、別にィ~かな?

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 堰堤の石垣の上に腰を下ろしていると、麓の方からロックフィルの壁面を伝ってさわさわさわさわ、えれぇ気持ちの良い風が吹き抜けていく。あんまり心地よいので日影もない堰堤の上で、昼飯を食うてしまったがです。

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 山の緑がとても美しい。嫌われ者の杉も、薄緑の新芽が、もこもこと湧き出すようでちょっと見とれる。落葉樹は緑の濃淡がそれぞれ違って、色違いの布切れを縫い合わせたようだ。遠くの山が青くかすんで、空も青い。

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  バイクの人が2,3人、やはり堰堤でぼ~~っとしている。見習ってぼ~~っとする。こんな時、我が壊れかけの脳みそはなにをしているのだろう。寝てるんだろうか、いや脳みそは、たぶん、かた時でさえ何かしている。ああにをしてるだね?

 ああ、わしゃな、あんたを心ぺぇしとるじゃ。あんたはこんな所へ、あにしに来ただね。毎日ぼ~~っとしとるに、ここでまたぼ~~っとして、どげぇすっとじゃ。もうちっと、なんか意味ある事したらええでねぇだか?!

 

 

 ダムサイトから下って、川っぷちの細道を辿る。時は昼、昼はお日様てっぺん、憩うべき影もなし。あぢ~、あぢ~、こんなに、あっち~なら八高線沿線と変わりないかもしれない。足元がふらりとする。

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  へたへた歩いて、楞嚴寺まで来た。エライ難しい漢字で読めない。(帰宅して調べてやっと。りょうごんじ。)あれまあ、山門がどえりゃあカッコええでねえだか。風もええ按べえに吹き抜けるだから、ちっとばあ休むべえでねえか。

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 庫裡の方から、にゃあがきた。にゃあ~ご(おい猫)、にゃあ(あんだよ、うっせえな)、なぁ~ご(どこへ行く)、にゃ(昼寝だよ)。ここまで問答できたが、あとは呼べども完全無視。こっちをちらとも見ないで、のっしのっしと歩く。

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 山門の石段の上でごろん。試みに、なでなでしようとしたら、手をおもいきりパンッと叩かれた。(邪魔すんじゃねえよ、こんにゃろ)。爪を立てなかったので痛くはないが、人を人とも思わぬ大層剛毅な猫だ。そうして堂々と目の前で寝てしまった。

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 彼の脇をそ~っと通って山門を降りた。完全に位負けしたとですよ、人にゃあちょくちょく負けるとですが、猫に負けたのは初めてです。人も猫も、気位が必要ってことを気付いたとです。(ヒロシです! =よく聞いてみると標準語だった!!)  

 

 

  もう少し下って「名栗川橋」。大正13年(1924)設置のコンクリート橋。埼玉県有形文化財であるとともに、土木学会選奨遺産。設置にあたっては住民もその費用を分担、言ってみれば悲願の橋。それよりなにより、96年を経て今なお現役!

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  さらに下って左岸へ渡る。こちらの道路は本来飯能市街地とを結ぶ街道だったが、右岸に立派なのができて、いまは車もほとんど通らない。だから歩きにはもってこい。静かな山里の、静かな道、いいなあ。

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  名栗村にも名水あり。「庚申の水」。とはいっても素朴に水道管むき出しで何の衒いもない。栓を開いてしばらくは暖かい水がじゃぼじゃぼ。顔を洗い、バンダナを濡らし、冷たくなったので飲んでみる。むむむ、軟水かな?

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  かっては村の中心街、いまは古い家が残るばかりで人通りもない。歩くにはその方がいいとはいうものの、一抹の寂しさあり。道が狭いし駐車場もないし、買い物は飯能まで出るのだろうし、ますます寂れるのだろうな。

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 寂れて空き家が目立つ。かってここに、にぎやかな家族の談笑があったのだろうな、と考えると諸行無常、なむなむ。人口が減るから日本全国同じようなものだと思うけれど、こういう地域は一層目立つ。

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  バス停の椅子で一休み。空に薄い雲が広がって風がそよそよ。道路の向かい側を背を丸めたお婆さんがゆっくりゆっくり歩く。その背中に白い蝶が2羽ヒラヒラ。お婆さんがこちらに向かって会釈、バス停横の地蔵様に挨拶したらしい。

 

 

  さて、広い道との合流点。名栗郵便局の旧局舎。これも空き家と言えば空き家だが、もしかすると歴史的建造物候補? 長い間取り壊されていないから、何ほどの由緒もあるのだろうと思う。正面の装飾がイカしてるぜ!

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 ここからは大きな道路をひたすら上流へ向かう。ときどき車が通るのが邪魔だが、ヤメレとは言えず。ただ黙々として歩く(一人旅だからず~~っと黙々だが)。こういう時はいっそう黙々感が強い。

 3時を過ぎてだいぶ疲れてきた。村はずれまで行くつもりだったが、途中から帰っちゃおうかな、と弱気が頭を持ち上げる。自分にべたべた甘く、意志薄弱ガンバレルーヤ無縁、でも歩いてさえいれば、いつかは目的地に着く。(これ、ことの道理)

 神社があったので石段に腰を下ろして一服。だんだんと暮れていく空の下で、ぽつんと座っている。なにやら寂しいひと時だが、あとで思い出すのは、こういう時間。名所旧跡はすぐに忘れて、こういう時間が懐かしい。

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 村はずれ到着。名栗川がおもしろい流れ方をする。左手から流れてきて、大岩にぶっつかり、奥に流れ去って大岩をぐるっとまわり、そら、こっち側から出てきた~。

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さて、スタート地点へ戻ろう、ここからは右岸の細道を辿る。高台から名栗村の村はずれを眺める。いい眺めだな、と思っていたら、一番手前の家から白髪のお婆さんが出てきて、不審そうにこちらを見ていた。いえいえ、怪しい者でなか、すぐ帰るばってん。

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  細道は、川の屈曲に沿って緩やかにカーブする。このカーブの按排がいい。。。なんていえばオタクだな。オタクも極めれば立派なもの、細道のカーブ評論家になれないものかなあ。マ、無理か。

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  名栗中学校まで来た。もうすぐ5時だけれど部活の生徒たちは頑張っておる。このいい環境で、のびのびして、いい大人になってくれよ~、期待してまっせ。ここまでくればスタート地点はもうすぐ。元気が出てきたじゃないの!

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 名栗村。終わってみれば、よかった、よかった。(名栗村凄いぜ!=昆虫凄いぜ)

 これで歩行距離15km(歩数換算)ほど、足首の痛みは出なかった。

 風呂上がりに梅干し一個、チュウ2杯。至福!

 このためにだけ、歩きに行くのかナ?