doniti 日誌

( おもしろき こともある世を おもしろく)

遥か出雲へ① (長野県)

 

 

   友達二人と一緒に旅行へ行くことにした。

 行く先は、遥か遠い出雲、この間延々と車を転がしてゆく。

 大まかなルートを決めただけで、立ち寄り先を調べたりしなかった。

 めんどくさい、のもあるが、立ち寄った場所で何を感じるか、それを優先する。

 これを「旅」と呼びたいところだが、観光とあまり変わらない・・・さてさて。

 

 

 天気が回復しているのか、山に霧が湧き出している。中央道をぎゅい~んと走って山梨県をぶっ飛ばし諏訪湖に休憩する。この旅では、出来るだけ下道を使いながらゆるゆる行きたいと思ったが、そんな阿保なことをすれば、一体どれだけ日数がかかるか分かったもんじゃない。止むを得ざれば仕方がないから、時間節約のため適当に有料道路を使う。

 またこの旅では、有名過ぎる観光地はなるたけ外し、2番目か3番目に位置するようなそんな場所を訪れたいと思う。だがしかし、素人の悲しさ、つい「こてこての観光地」という場所にも行ってしまうだろう。これも止むを得ざれば仕方がない。

 

 

安曇野展望

 松本で下道に下り、安曇野と言われる一帯を空から見下ろしてみたいと思った。安曇野の地上を歩いたことがあるが、なんだかその良さが実感できなかったので、今度は上からその全体を眺めてみたい。で、松本市アルプス公園をようやく探して上った。

 この公園は、松本市の東の山地が盆地へ突き出している丘陵の上にあった。そこまで結構な坂道をぐいぐい上って、たどり着いたところが目指す展望地の反対側だった。案内標識があまり親切にできていない。とても分かりにくかった。

 

 しかし、しかしだよ! 正規の展望台に戻り3階から眺め下ろして、目がまん丸くなった。遠くアルプスの麓の山すそから人家と森が点在して迫り、その隙間に緑と黄色の、パッチワークのような畑や田んぼがとても美しい。これが安曇野かあ!

 西に聳えるアルプスは全面的に雲隠れして顔を隠している。しかし麓の山から霧が湧き立って幻想的な雰囲気を醸し出し、その山すそから盆地の中心部に向かって、安曇野の台地が緩やかに下っている。真ん中の線は梓川だろうか。

 

 

 松本盆地そのものが梓川やその他の河川が作った扇状地なのだろうが、安曇野の台地もアルプスの前山が造った緩やかな扇状地なのかもしれない。安曇とは、遠い昔の、海にかかわる氏族の名だと聞く。どうしてこの山のど真ん中を安曇野というのだろう。

 

 

白馬・八方の湯にドボン

 安曇野を眺め下ろしてから、長い時間走った。松本盆地を抜けて次第に山の谷間に入り込んでいく。田んぼと散在する民家と、どこにでもある変哲もない田舎の風景だけれど、こういう眺めこそがこころに染み込んで、折に触れてふと思い出したりする。

 仁科三湖(木崎・中綱・青木湖)を過ぎるときに、なんとなくこのあたりが分水嶺かな、と思った。そしてすぐに白馬村に入った。川は日本海に向かって流れている。しかしなぜ白馬村? 若い時にスキーでここの八方尾根に通ったのだ。懐かしい。

 

 あの頃の白馬村は寒村と言っていいほど鄙びていて、温泉施設などなかった。農家のような宿に泊まり、凍りついた野沢菜が旨かったのだが、今は現代的でスマートな地域に生まれ変わっていた。少しさびしい。

 八方尾根スキー場の麓の八方の湯にドボン。う~ん、いい湯だ。内湯は特に、ねっとりと柔らかく、肌が思い切りすべすべする。汚い爺イがすべすべしてもしょうがないけど、貸し切り状態で、露天風呂もゆっくりと堪能した。

 

 

 裏側にゲレンデが見える。あそこをゴンドラに揺られて登って、更にリフトに乗り継いで、ケルンがある尾根まで登ったけなあ。当時は、こんなに長くて起伏にとんだゲレンデはとても魅力的だった。今はもう記憶も定かでないけれど、わが青春だったかな?

 

 

 こうしている一瞬いっしゅんがもう決して戻ってこない時間。

 だからもっとゆっくりとすればいいのに、どうしても先を急ぐ。

 愚かなことだと思っても、止めようがない。困ったことだ。