doniti 日誌

( おもしろき こともある世を おもしろく)

五感を澄ませろ

 このコロナの真っ最中に電車に乗って、歩きに行くなんて!

 何考えてるの! バッカじゃない!

 

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 然らば電車に乗らなきゃいいわけだ、フン! 乗らなくたって歩けるわいッ!

 啖呵を切ってはみたものの、と、なれば何回となく歩いた道を又歩かねばならない。止むを得なければ即ち仕方がない。丘陵の上に登ってみる。雑木林はすっかり葉を落として、何だかウソのように明るい。

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 今日は比較的暖かくて、気温は10℃ぐらいになるそうだ。10℃なんてものは、他の季節ならば死ぬほど寒いと言わなければならないが、この時期なら、なるほど温とい。人間の感覚なんて、つくづくいいかげんなものだと呆れるほかない。

 雑木林の道は陽が照って明るいのだけれど、小鳥の声はちっとも聞こえない。居心地がいいのに何故だろう? 朝の早い時間には居たけれど、もうお昼近い時間であり、鳥たちは解散してしまったのだろうか。

 

 道の両端は落葉が積もっていて歩きやすいが、地面むき出しの真ん中へんは、黒い土の間から霜柱が顔をのぞかせていて、踏み込めば泥濘になるに違いない。どういうわけか霜柱は必ず上に薄い土の層を乗せている。まるきりむき出しの霜柱は見当たらない。

 道と林との境目あたりにはいつも様々な草が生えているが、さすがに今は草がない。でもところどころ、去年の背の高い草の枯れた茎がそのまま残っている場所もある。歩きなれた道も、季節ごとにずいぶん表情が変わるものだ。

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 脳科学関連の本を読むと、いずれの著者も「この怒涛のような情報社会を生きていかねばならない人間は、大脳皮質ばかり使わないで辺縁系を使うべきだ。即ち人間に備わっている五感の感覚を大切にしなければならない」と言っている(ように思う)。

 「風も吹かない、温度管理された部屋に閉じこもってパソコンばかり触ってんじゃねえ! 野外の自然の中で、暑さ寒さを感じ、風をとらえ、小鳥の声を聴き、地面の硬さ柔らかさを分り、明と暗を自覚しろ! 」と言ってるらしい。

 作られた情報ばかり相手にして感覚を忘れると、自然を感じる力がなくなり、強いては人と人との間の感受性も鈍り、人とのつながりが弱くなって孤立する。情報社会は人をばらばらの個に解体してしまう。だから五感で感じろ。と言っているらしい。

 

 ・・・んなこと言われてもなあ、年取ってるし感受性はきっぱりと鈍くなってるし無理な注文だなあ。第一昔のような自然はどこにある? 山の奥の方には残っているんだろうけれど、もうそんな場所に行けないよ。

 

 

 淡々と道を歩いていると、本に影響された頭がそんなことを思い浮かべてくるが、その思いを振り払って古城址の広場まで来た。今まではほとんど人に出会わなかったが、ここにはだいぶ人がいる。

 ベンチでガスを使いラーメンを茹でている人だっている。ま、大部分の人が思い思いに、そこらに腰掛けて静かに本を読んだりしている。ちょっとの時間、散歩に来た、という趣の人が多い。ベンチに腰を下ろしてこちらも昼飯にする。

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 ふと見ると広場の梅の木に赤い花がポツンポツンと。梅が咲き始めたんだなあ。誰かのブログに、梅は咲き始めがいい、咲きそろったらおもろない、と書いてあったのを思い出した。うん、そうかもしれない。

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 古城址から麓の住宅地へ下る。そこは丘陵から流れ出た一本の川が作った丘陵の谷間のような地形で、その川の岸辺に遊歩道がある。午後の穏やかな陽を浴びながらぽくりぽくりと遊歩道を辿る。春には浅く、畑はむき出しの土。

 川の水たまりに白鷺かな、真っ白い鳥が立ち込めていて動かない。傍にはカルガモみたいな水鳥も2羽。と、白鷺がのそりのそり動いて、電光石火、くちばしに小魚をくわえてごくりと飲み込んだ。彼は決して愚鈍ではない、俊敏なのだ。

 しばらく見ていると、カワセミが! わお! カワセミカワセミだ! とてもじゃないが望遠のないカメラでは、決して捉えられるものじゃない。カメラは諦めしばらく観察。瞬時に水に入って瞬時に出てくる。あちらこちらと飛び回る。

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 ぽかぽか暖かい日を背中に受けて帰る。

 今日は短い散歩、13㎞。ああ、コロナよ、わが歩きに、なにをする!

 五感を澄ましてみたけれど、大したものは感じ取れなかったなあ。

 

 

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