doniti 日誌

( おもしろき こともある世を おもしろく)

奥多摩で返り討ち2

 

 立川の仇を奥多摩で討つべく奥多摩駅までやってきた・・・どころの騒ぎじゃない

 

 

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 台風19号のため、数馬狭(白丸ダム)の遊歩道(大多摩トレイル)がすべてずたずたに寸断されてしまったらしく、目論みは大外れのパ~となった。結局、鳩ノ巣渓谷まで車ぶんぶんの青梅街道を歩く羽目になって、ぎっちょんな目にあった。

 これからは、鳩ノ巣渓谷から街道脇の細道を辿って、せめて御岳渓谷まで歩こうと思う。まあ、仇討は返り討ちとなったが、それはそれとして、ここらの小さな集落の道を歩くのは楽しい。鳩ノ巣小橋から登って橋を渡り、右岸の小集落を抜ける。

 そして再び青梅街道に戻る橋の上から、向こうの山裾の杉林の中に固まった鳩ノ巣の集落が見える。なんだか初冬の日を浴びて暖かそうだ。しかしなあ、と思う。奥多摩の山は、そのほとんどが杉か檜か知らないがびっしりと針葉樹に覆われている。花粉症の元凶であり怪しからんことだが、昔は必要とされたのだろう。

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 青梅街道に戻って少し歩くと、街道を離れて多摩川の側に昔の青梅街道だったらしい細道が続く。いかにも昔の街道らしい趣があり、道祖神や地蔵様が祀られている。こういう素朴とも思える信仰は、昔の人にどんな心理的影響をもたらしたのだろうか。そんなことを思いながら、こういう細道を歩くのがおもしろくて仕方がない。

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  古里の駅前の橋を渡って、右岸、吉野街道を歩く。吉野街道に面して茅葺屋根の長屋門と、そして奥に茅葺の母屋、蕎麦屋「丹三郎」がある。長屋門は都選定の歴史的建造物なる由。説明板によれば、昔、原島丹三郎なる人が埼玉の大里郡から移り住んで、村の名を丹三郎と称したので、この辺りの地名も丹三郎という由。この家は名主宅か?

 門も母屋(蕎麦屋の店)もこれ以上なき風情ありと言えども、肝心かなめの蕎麦がなあ。一度でもはや、というべきに至りここで食する気もなけれど、既にして店じまい、まあ互い様というべきや。

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  街道から少しそれて、また小集落に入る。山の陽はすでに陰って、夕べのような細道をとぼとぼと辿る。歩みはとぼとぼだけれど、古い家並みや畑を見ながら、気分はとても楽しい。どこもそうだけれど、街道の脇には昔街道だった細道が分岐している。予定の御岳までは街道を歩いたり脇の細道を歩いたりとなる。

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  そんな風にして、御嶽駅前に架かる御岳橋に到着。橋から見下ろす御岳渓谷は、相変わらずの乳白色だが、流れも緩やかに穏やかに見える。今日はここで終わりにする予定だが、よく歩いたようなまだ足りないような、中途半端な気分。

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 橋を渡って青梅街道に行き、川に降りてみた。川辺の紅葉は色がくすんで終わりかけのようだった。ここの紅葉の写真がネットなどによく掲載されているらしい。もう少し早ければ綺麗だったろうなと思う。 

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  川べりまで降りて、思わず目を見張った。なんと! 玉堂美術館の下手の歩道橋が、・・・真ん中からぽっきりと折れて無くなっている。しばらくぽかんと見つめていたが、なんだか不気味なような恐ろしいものを見たような気がした。

 当然あるべきものが無い! あると思って疑いもしないものが、突然断ち切れてぽかんと虚空。よく目を凝らしてみれば、残った橋げたの白い壁に枯れた草がへばりついていた。ここまで台風19号の濁流が押し寄せ、流してしまったらしい。あな恐ろし!

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 川べりに静かな夕暮れが迫る。台風の爪痕をそこいらじゅうに残して、それでもなにごともなかったように今日の日が過ぎ去ろうとしている。時は怒涛のようにすべてを押し流してしまうものなのか。

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 ふと歩数計を見たら、ここまで約20㎞、近年まれによく歩いたかもしれない。膝が痛い、限界かもしれない。さて、独り慰労会を挙行する必要がある。御岳駅側の坂を少し上って玉川屋という蕎麦屋に行く。外観は茅葺小屋の風情。

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 中学生みたいな女の子が出てきて、お酒というと燗をしますかと聞く。これはありがたい、うすら寒い中で熱燗をちびちびして温ったまろう。酒がきた。ちびり。変な雑味がある。480円と安いのだから即ちやむを得ない。蕎麦はまあまあ旨い。

 盛り蕎麦をつまみに雑味酒を文字通りちびりちびり、それでも一本が空くころは妙(たえ)なる気分になってきた。疲れていて回りが早いのか。時刻は4時半ごろ。今日いちにちはどうだったか、などと考えてみる。

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 見事返り討ちにあったとは言いじょう、悔しくも楽しかりきと思う。奥多摩が紅葉の名所というわけでもない(御嶽山は確かにきれいだ)けれど、名所でなくても田舎道を歩いていて、それだけでもすでに楽しい。

 まあ、もの好きだと言えば確かにそうだ。こんなことやってみても、さらに益無きことに違いなけれど、貧乏なれど無暗に益を求めず、益ありて財ありと言えども彼岸には無用なるべし。チ~~ン!。

 

 

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 帰らねばならない。

 カラスもカケスも寝床に帰った。

 奥多摩の山の端の上に、千切れ雲が薄赤く染まった。