doniti 日誌

( おもしろき こともある世を おもしろく)

古道、布田の道を歩く

 今月の「歩く会」は、「布田みち」。

 前回の「谷戸のみち」に引き続き、小野路から歩いて町田市北丘陵を横断する予定。

 

 

 多摩センター駅に集まった18名、いずれも元気はつらつ。曇り予報だった空が、なにやら全面的に晴れて弩ピーカンらしいから、それだけで嬉しい。ワイワイガヤガヤと全員集まったので、バスで多摩ニュータウンの街並みを突っ切って丘陵地に入る。

 

 

 今回も女性のSさんがリード。丘陵の南斜面、一本杉公園を彼女の柔らかい案内で巡っていく。女性の案内は、男女双方からとても好評。むくつけき爺さん案内はともすれば敬遠、毎回女性の案内がいいと思うが、これが案外難しいらしい。

 公園の一角に万葉歌碑がある。防人に出てゆく夫を見送る妻の歌だと書いてある。

「赤駒を 山野に放し 捕りかにて 多摩の横山 徒ゆか遣らむ」

風化した石の面のざらざらが、なにやらこの妻の心情を物語っているような。

 

 

 そして丘陵の麓に降り、小野路宿の小野神社へ。古代からの由緒があり、小野篁を祀った社、と説明板にある。この地は鎌倉街道が通じ、さらに遠く古代の都にも到る交通の要衝だというから、ふむ、と唸って皆説明板を読んだ。

 ちなみに今回歩く布田の道も、調布市の布田五宿と、ここ小野路宿を結ぶ、昔のれっきとした街道であるらしい。それが開発を免れた町田北部丘陵に辛うじて残った、ということなので、いにしえを踏みしめながら歩くことにしよう。


  

 神社のすぐわきにある小野路宿里山交流館へ入る。すこし早いがここで昼飯をしないと、他に適当な場所がない。食うことについては誰からも苦情は来ないから、冬の陽だまりの縁側に座って、まぐまぐと昼飯をしたためる。みんな、縁側が似合うなあ。

 

 

 ここから本式に布田道に入る。前回歩いた谷戸の道も布田道の一分らしいが、その詳細を知る人がもういないというから、われ等は、ここからが布田道なのだと思って歩くことにする。古道の面影をしのびながら。

 

 

 お昼が終わって、小野路宿を少し歩き、右側の丘陵の中に突っ込む。細道をひーひー登って関谷の切通に出た。鎌倉の切通みたいだな、と誰かが言った。小さな標識に「近藤勇が歩いた道」とペンキで書いてある。

 

 

 丘陵地を抜け出ると、長閑な、温かそうな里の道になった。イチョウの黄色が眩しい。この道最高! と思う。車はいないし、人もいないし、猫ぐらいいてもよさそうなのにいないし、ポカポカと陽の照る中を、惜しむようにゆっくりと歩いた。

 

 

 そして南北に走る現在の鎌倉街道に出て、別所の交差点を突っ切り、東へ向かう布田道を辿った。その細道は丘陵の尾根へ向かって登りが続く。えんやこら、と登って汗をかき、みんなそれぞれに脱皮を試みて、立ったまま小休止。

 その後も砂利道に変わってさらに登りが続き、ぜーぜーと息絶えだえ、身も世もなくなった頃ようやく尾根の上に出た。たかだか5,60m登ったにすぎないが、なんであれ登りはダメなんである。駅の階段だって途中で息をつく。

 

 

 とつぜん藪の中から観音様がぬっと顔を出した。なんだ? なんだ! こんなところに? と思って、ぽかんと口をあいて眺めた。金銅製の立派なものだが、いかにも藪から棒。後で調べたらこの付近に観音堂が存在していたらしいことが分かった。



 そこからすぐに変電所があって、その脇が草原になっている。これ幸い、それぞれ草の上に座って大休憩。雑木林の、間もなく散ってしまう色づいた葉が、初冬の午後の陽ざしに照らされて、最後の輝きを見せている。

 

 

 そこから霊園の脇を通って丘陵を降りた。降りたところは開けた谷戸で、周りに田んぼや畑が広がっている。ここではまだ農業が続けられているらしい。この谷戸の奥に明治大学の農場もあるらしいから、昔から農業が盛んだったのだろう。

 

 

 そして向こうの山の麓にある毘沙門大堂へ行ってみた。明治期までここに金剛寺というお寺があったそうだが、廃仏毀釈の嵐の中で廃寺となり、今は何もない。首を落とされたお地蔵様が空しく並んでいるだけであった。

 

 

 農業地域にふさわしく、近くに農産物直売所があるので休憩方々立ち寄った。菜っ葉や大根が並んでいるが、これを買うと大荷物になる。まだ歩きが終わっていないのに重い野菜を買い込んではにっちもさっちも、どげんもしょうがない。

 

 

 野菜を買うのは控えて、近くの汁守神社へ立ち寄った。妙ちくりんな名前だと思いSさんに聞くと、この近くに飯盛神社もあり、武蔵総社の大國魂神社例大祭の時に、「汁盛」「飯盛」で飯ものを供御したらしい、とのこと。この地の人々は、農業が盛んだったから祭礼の食事を分担していたのではあるまいか。

 

 

 そしてここで、今回の歩きが終わった。本来なら京王線若葉台駅まで行く予定だったが、もう「古道、布田道」の面影がない近代的な道路だけなので、終了にしようとなった。まだ3時で早いけれど、冬の日は短い。

 

 



 今回は冬場の歩き会らしく、短時間で10㎞ほどの距離。
 悪いオヤジと、珍しく紅一点、立川駅近くで大宴会。

 一気に若返ってしまい、わあわあと時が過ぎた。