doniti 日誌

( おもしろき こともある世を おもしろく)

いい天気だ

縮こまりの12月、飲んだくれの1月。

体が思い切りなまってぐにゃぐにゃ、これじゃいかん、歩くべし。

 

 

 歩き方を忘れたぐらい、鬼のように長い沈滞を経て、久ッさしぶりさんぽ。

近場、平井川の岸辺をぷらぷら歩こうと思う。平井川は多摩川の支流だ。御岳山の近く日出山から流れ出ている中河川、家少なきによって流れは澄んでいる。春は梅、桃、染井吉野、枝垂れに縁どられ、桃源郷の観あり。冬の眺めは如何に。

 

 

 忘日、厳冬にあるまじきぽかぽか陽気、無風。されど景色はさすがに冬、見回してもいささか寂しい。あれ? あれはなんだ! 段丘の小さな広場に、鬼の角がにょっきり二本、何かのおまじない? としばらく考えて思いあたった。

 これは「どんど焼き」で燃やすものじゃないか。ここからちょっと遠いから周りについているゴミのようなものが何かわからないし、藁の茶色でなく緑色であるのも何だか変だけれど、小正月が近いのだから、どんど焼き以外に思い浮かばない。

 

 

 まあ、それはそれとして、温かい日差しに包まれて、長閑な土手道を上流に向かってぽくぽくと歩く。空は青く晴れ渡り、遠くの山影が群青色に沈み、川辺の草は茶色に枯れて春を待つ風情だし、緩やかな流れがかすかな水音を送ってくる。 

 

 

 土手には、この時期ならでの草の実が見られるが、無論のこと名前は知らない。鮮やかな朱色はクコの実だろうか、灰色のはグミかなあ、イタドリみたいな草が葉を伸ばしたのはいいが、寒いので赤く染まってしまったらしい。

 そのほかには、蝋梅が強い香りを放って花盛りだった。これが咲きだすと間もなく、早咲きの紅梅、白梅、そして木瓜、連翹、それから桜へと花の春が展開するはずだ。今年もまた、その一続きの時間を何事もなく過ごせるのだろうか、神のみぞ知るダナ。

 

 

 

 しかし体が、特に脚の奴めがすぐさま、さぼろうと企てる。ちょっと歩くと、もう休もうよ、などとほざくから癪に障る。この一か月の恐ろしい怠慢で、なまりになまってぐにゃぐにゃ状態、どこまでふざけりゃ気が済むのか、許せん!

 あれを見ろ、おじさんおばさんが集団で畑に出ているではないか、少しはあの労働を見習うがいい。あれは見たところどうもプロのお百姓さんではなく、素人の人らしいぞ、それでも頑張って畑仕事に精出してるではないか、ただ歩くなんて屁の河童じゃないか。

 

 

 そのように体を叱り飛ばして歩き、いくつもの「どんど焼き」の円錐形を見た。今度は近くに寄って行って、しげしげと観察。筐体は笹竹のようであり、それを縛った縄の目に、神社のお札やらお正月の飾りやらが縛ってある。赤いのはダルマ。

 子供の頃見た「どんど焼き」は藁でくみ上げてあったのだが、考えてみれば今どき藁はないのかもしれない。それと正月の書初めなどを一緒に燃やしたものだったが、いま書初めなどしないらしく、そういうものは見当たらない。

 それにしても、この多摩地方の「どんど焼き」の形は、押しなべて円錐形であるらしい。そして必ず二つ作られている。まあ、円錐形なのはなんとなくわかるような気がするが、必ず二基というのは、なにか意味があるのだろうか。

 

 

 長閑な眺めだ。春を思わせる陽気の中に、「どんど焼き」も、枯れ色の川岸も、家々も、山も、み~んな音もなく鎮まり込んでいるようだ。田舎はいいなと思う。山の中の育ちだからか都会では無暗に緊張するが、田舎では途方もなく弛緩してゆく。

 ならば地方に住めばいい、が、今住んでいるところが、都会と田舎の境目の田舎寄りで、ちょうどいい田舎具合だから、それでいいと思っている。究極の田舎は山の中かも知れないが、それには登るといういやらしさが伴うので却下である。

 

 

 ひとまずの目的地、日の出町役場に到着した。広々とした低い段丘に役場庁舎や都森林組合や広い圃場がある。畑の向こうに枝ぶりのいい紅梅が満開の花をつけている。寒さに向かう季節だけれど、季節は着々と移っていく。

 ここで遅めの昼飯、広場のベンチに座ると、空一面に薄い雲がかかった。けれど春の陽気に変わりがない。向こう側で庭整理のおじさんが一人、植木の剪定やら枯れ草掃除などをしている。見ていると、まるでやる気がないようで、かったるく動いていた。

 

 

 さて、ここからあきる野台地を横断して五日市線武蔵増戸駅に出ようと思う。今日は短い距離のさんぽだけれど、ま、とりあえずの体慣らしにちょうどいい。今後はこれに懲りてちょくちょく歩かねばなぁ、と思う。

 何回か歩いた道筋だから、よもやと思ったけれど、方向音痴はそれでも迷った。適当に歩いていたら知らない道に出て、それを又適当に歩いて、ここは何処? 状態になり、やっとのこと這う這うの体で駅に着いた。3:30ころ。

 

 

 

 

 4時過ぎ帰宅。それでも約17㎞になった。

 春の兆しも見られたけれど、春はまだ先のこと。

 寒くなるが、せいぜい歩かなくちゃなぁ。