doniti 日誌

( おもしろき こともある世を おもしろく)

新緑はいきんぐ

 山の緑が美しくなったので、仲間とハイキングに出かけた。

 場所は青梅の裏山、ほんのちょっこっとの短いコース。

 

 

 ハイキングと言っても、街のすぐ近くだし、コースは平らかで子供でも歩けるし、ゆっくり歩いても3時間程度の距離だし、要するに高齢者向きにできている。ま、山の中を歩くのは初めてなので、この程度の楽ちんさ加減がちょうどいいや。

 

 青梅の駅を降りて、すぐ裏の丘陵に上ると「鉄道公園」があり、SLが5,6両鎮座している。どっしりと岩のように黒ぐろと、その重量感はやっぱり比類がない。仲間に「乗り鉄」がいて、彼はさすがにじっくりと見ていた。

 建物の中には大きなジオラマもあったが、動いていない。動かない鉄道ジオラマはナンダカナである。女性軍はやはりあまり興味がなさそうだし、とっとと山道に入ることにした。周りの若葉が、そよ風にように美しい。


 

 山道に入ったけれど、道幅は広く、ほぼほぼ平らでまさに年寄向きである。ときどき杖を突いた、たぶん80過ぎと思われるお爺さんやお婆さんと行違う。地元の人だろうと思われるが、ここを毎日のように歩くのは、大いに健康的だろうなあ。

 初夏の日差しが頭上の若葉を貫いて差し込み、きらきらと風にそよぐ。鶯の、まだへたくそな鳴き声が聞こえてくる。一行6人、仲間同士のおしゃべりも弾む。こんな、のんびりした道を、おしゃべりしながら歩くが一番、という人もいた。

 


  

 金毘羅神社に立ち寄って休憩。社殿は建て替え工事中、石段に座って、女性軍から差し入れのお菓子タイム、やはり女の人はこういうところで細かく気遣いをしてくれる。男どもだとこういうことはまずない。味気ない。

 

 

 その後、また第二休憩所というところに立ち寄ってみた。北側の展望が開け、丘陵が重なり続いている。「あ、塩船観音が見える! 」と若やいだ声が聞こえた。こういう時、人は一気に若くなってしまうらしい。

 若葉が光るその向こうの丘陵の中腹に、辛うじて観音様の立ち姿が、見えたような、見えないような、そんな気がする。何しろ老眼である。それにもまして、パッチワークを貼り付けたような、濃い、薄い緑の山肌が得も言われず、である。



 山道にしては広い道が続く。小鳥の声がする。お爺さんが杖を突いて休んでいる。頭上を風が渡っていく。その中をわれらは歩いて行く。道っぱたに若草が萌える。小さな花が咲いている。名を知らぬがたまに瑕、みんなで、ああだこうだ言うのみ。 

 

 


  さあ、第4休憩所に着いた。お待ちかねの昼飯、陽の当たるベンチを避けて、女性軍は東屋へ侵入、前客とたちまち話が始まる。男どもは表でうっそりと握り飯を食う。時は春、春は新緑、世はなべてこともなし、と見える。

 前客が出発してテーブルが空き、女性軍がコーヒーを入れる。簡易ドリップだけれど馥郁と香りが流れる。お相伴。旨い! 。近頃のこの手のコーヒーは著しく進化しているらしい、が、値段が高いものかもしれない、御馳走様。

 

 

 ところどころ開けた場所があって、向こう側の丘陵と下界の街並みが見える。丘陵の山肌は、まさに笑うが如し、って、笑わないよなあ。しかし木々の若葉が湧き出すが如くもりもり盛り上がって見える。命輝くほんのつかの間。

 街並みは多摩川の向こう、吉野の街。意外と家が建て込んでいる。日本という国は、どこでも山に押し込められて、狭い場所に人が住んでいるんだなあ、と実感する。何しろ国土の7割が山だというのだから。眼下に多摩川が光っている。

 

 

 そこからちょっと坂道、今回初の、はー、はー、ひーひー。仲間うち一人で、息も絶え絶え、皆に不思議なものを見るような目つきで睨まれた。こちとら自慢じゃないが、上り坂と来た日にゃ、全く手も足も舌も出ない。ひたすらに、はー、はー、ひーひー。

 そうして「矢倉台」に到着。なによりかにより、大休憩をせねばならない。息を整えて初めて周りを眺めることが出来た。近くの眺めは、新緑がわらわらと盛り上がって、様々な緑が言いようもなく清々しい。いいときに来たなあ、と思う。


 

 さて、ここから宮ノ平駅に下る。至って楽ちんな爺様コースなんである。杉の木の間を緩やかに下る道は、午後のバカ暑い日差しを遮り、気持ちがいい。歌でも歌いたい気分だが、誰かに遭遇するとワヤだから、せいぜいお喋りぐらいにしておこう。

 そうして瞬く間に宮ノ平駅に下った。駅横の広場で休憩。まだ午後2時ころで、時間はたっぷしある。これから青梅の街中を、ちくっとばかり立ち寄りながら駅に向かう予定。それにしても誰もケガがなくてほんとによかった。

 

 

 そこから青梅の「臨川庭園」に行った。青梅の名士のかって別荘だったところだが、今は市の管理、ツツジが咲いているかと思ったが、まだ少し早かったようだ。しかしここも若葉が美しく、裏側の多摩川の流れが涼しげな瀬音を立てていた。

 テーブルを囲んでまたお喋りの花が咲く。今回のような、ゆる~~いハイキングをまた続けられたら、と話が出る。誰か適切なコースを見繕ってほしいという。年寄り仲間と人は言うだろうが、年寄りだって気楽な仲間が嬉しいのだ。



 それから、街中の金剛寺に立ち寄り、駅に戻った。

 駅近くの中華で一杯と思ったが、まだ昼休み中、またの機会に。

 4時ころの電車で、それぞれ帰途に。

・・・

と思ったら、国分寺の焼き鳥屋で男どもだけ飲んだくれていた。

う~~む、どっと払い。