doniti 日誌

( おもしろき こともある世を おもしろく)

散歩四歩

 

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 散歩に行く途中、下車駅から歩いてコンビに立ち寄った。

 昼飯のおにぎり、これは絶対不可欠。傘忘れても弁当忘れるナ、と言われている。雨はなんとかすれば何とかなるが、昼飯が無かったら確実にへたばる。ましてその空腹感は鬼の如くであり、精神的ダメージは計り知れない。

 さあ、これで後顧の憂いなくどこへでも行ける。どこへ行こうが、どこにも行かずこの辺でぼんやりしようが、夕方までは自由。なんならずっと自由のままでもいいけれど、さすがに寝る場所は必要だから、夕方までの自由開放なのだ。

 

 

 丘陵の陰に大伽藍を備えた寺がある。その墓地の端っこのちょっとした広場に座って一服する。おばさんが熱心にお墓の掃除をしている。一服の間に掃除が終わったらしく最後に神妙に手を合わせて立ち去った。

 今度は上の方から、これもお墓参りらしい、よそ行きの格好の女性が二人、本堂の方へ歩いて消えていった。それであたりが森閑として、墓石に日が照って眩しい。巨大な伽藍の向こうの清々しい緑が一層目に沁み入るようだ。

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 丘陵に挟まれた細い道に入る。なだらかな坂を上って下りになる。道の左は山肌だが、右側が少しづつ開けていく。最初ここを歩いた時、開けた右側に小さな田んぼが並んでいた。次に歩いた時は耕作放棄地のようになっていた。

 いま右側には廃棄物処理場が、銀色の鉄板に囲まれて並んでいる。この道は、お気に入りの小さな集落に行く、お気に入りの散歩道だったのだが、時が移ってこうなった。やんぬるかな、と思うけれど仕方がないかなあ。

 そうして小さな集落に入ってきたが、ここは変わっていない。丘陵に囲まれてこじんまりとそして静かだ。明るい陽が照る畑で爺さんが何か作業をしている。道脇の小川に小魚が泳いでいる。若葉が風にそよいでいる。

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 里の家々は若葉に埋もれて静寂閑として、集落を囲む丘陵の緑が特に美しく、空青く、遠い田舎に来たように思う。遠い田舎たあ、どこだ! と言われてもちと困るが、遠い日に見たような景色であるように思う。 

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  たちまち里の中を通り過ぎた。こういう美しい景色がずっと続けばいいと思うが、そうはいかない。道は伝統的な作りの農家の前を向こうへと続いている。どこへ行くというあてもないからそのまま進んだ。

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 しかしこの道は、丘陵の壁と小川に挟まれた変哲もない道だった。大きな病院の看板が無暗に出ている。随分不便な場所にあるものだと思う。どうも年寄りが入院する施設のように思われて仕方がない。思い過ごしだろうか。

 そして県道に突き当たった。先の方に桐が咲いている。スマートフォンの地図を見ると、近くにハイキングコースらしい点線の表示がある。もし歩けるならこんな道もまた一興。その近くまで行って、歩けるかどうか聞いてみよう。f:id:donitia:20210504140358j:plain

 

 

 その道近くに店屋があった。覗いてみると十数人の人が長いテーブルでまさに昼食の最中だったが、青年が相手をしてくれた。ところが一向に要領を得ない。道を知らないらしいのだが、なんじゃら言うので、ともかくお礼を言って立ち去った。

 ならば、行ってみてダメだったら引き返せばいいと思い、入っていくと奥に数軒家がある。家の前で靴を洗っていた若いお嫁さん(?)に聞くと、彼女は大急ぎで裏の家に飛んでいき、顔がそっくりのおばさんを連れてきた。

 ええ、この道はハイキングコースですよ、ただ何年も歩いていないから今でも歩けるかどうか? ととても親切だ。歩けなかったらすぐさま戻りますから、と三拝九拝して勇気百倍となって道をたどる。

 とその先で草刈りをしているおっさんがいたので、更に確認しようと思った。狂瀾怒濤のような草刈り機の騒音が静かになったので、聞いてみたら、聞こえねえ!! の一言だけ、再び草刈り機は狂ったような音を立て始めた。

 これを以てこれを考えるに、若い人に道を聞くのはしばしば失敗する。おばさんはわざわざ家から出てきて、親身に教えてくれた。おっさんの態度にはむっとしたが、帰宅後考えたら、どこの馬の骨の爺様のたわごとに、草刈り機を止めるのが嫌だったのだろう。むべなるかなと思われる。ともあれ、おばさんの親切に感謝。

 

 

 このハイキングコースはまるで平気で歩くことができた。杉の樹林だから薄暗く、鳥も鳴かずなにやら不気味な感じがしないでもないが、足元はしっかりしていた。行き着く先がどこなのか知らないが、まあ狭いところだから何とかなるだろう。

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  一人寂しく歩いていたら(この時期は人に行き会わない方がいいのだが)、だんだん上り詰めて尾根に登った。尾根道は林道にようになっていて、ここへ来ると、ときどき人がいる。やれやれひとまず安心した。

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 一組のご夫婦が、どうしたわけか行きつ戻りつしている。林道の脇に出入りする道がいっぱいあるので、迷うのだろうか。奥さんの方がしきりにスマートフォンを凝視している。こちらは、すたこら林道だけを歩く気だから、脇道に目をくれない。 

 しばらく行くと「七国広場」と看板がある場所に出た。どうも一帯にハイキングコースが縦横にあるらしい。広場のベンチで幼い子を連れた家族連れが休憩していた。釣られたわけでもないが、ここで昼飯、エネルギーの源、コンビニおにぎり。

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 そこから下り一方。しかぁ~し、左足首メがまた怠業を起こし始めた。靴の足首をがばがばと緩めているにもかかわらず、痛い。痛いから曲げられず、その分膝がぎくしゃくぎくしゃくする。どうも宿痾だなあ。

 何とか麓まで降りて、医王寺の境内で大休止とする。痛い足首に消炎剤を塗りつけてみたが、霊験ありやなしや。参拝のおじさんおばさんが上がってくるが、もはや躑躅もお終い、今年は何でも早かった。

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  医王寺の境内でしばらく休んだが、このままここにずっと居るわけにもいかないだろうと思う。ともかく近くの駅まで行かなねばならぬ、ぎくしゃくするけれど、全く歩けないほどではない。この足首をどうなだめすかし、どう騙し倒すか、今後の課題だな。

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 ともかく駅まで歩いて電車に乗って帰った。

 今日の、これはこれで面白かったと思う。

 三歩のつもりが四歩になって、総歩行距離:16㎞。

 

 

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