doniti 日誌

( おもしろき こともある世を おもしろく)

御岳を越える、はずが・・・

 

 前回の秩父の紅葉は赤や黄色が少なかった。

 ならば、御岳を越えて五日市への谷筋はどうだろうか。

 秩父の仇を御岳でとれるか!

 

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                                                                              ↑ (「岳」と「嶽」の用字間違いがあります)

 

 

 昨夜の各種天気予報は、どれもすべて弩ピーカンだったのに起きてみればどんより曇り。迷ったけれど、ともかく出かけるです。電車内はハイカーで一杯、御嶽駅まで立ん坊余儀なし。御岳のバス停もわらわらの行列。休日に観光地、という最悪パターン。

 歩きに来たのだから、せめてケーブルぐらいまでは歩くとするべ。駅前の橋の上から多摩川を望めば、寒いのにまだカヌー遊び、若者は元気だ。御岳ケーブル駅目指して、とことこ進むと、何台ものバスに追い抜かれる。車内はハイカー鈴なり。

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 赤い橋の先からは、胸突き八丁のきつい登り坂。早速、はあはあぜえぜえ、100m登っちゃあぜえぜえ、また100m登っちゃあはあはあ。パパに手を引かれて2歳ぐらいの女の子だって登っているのに。と、「抱っこ」。そうだよねえ、こっちも抱っこして!

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 このきつい登りは1㎞弱続くから、休み休み行く。若い人にすいすい追い抜かれ悔しい。ふと目を上げれば、色付いた山を背景にして雰囲気ある茅葺屋根が見えた。かっこいいじゃないか、あれは何だろう。けれど、その景色を楽しむ余裕がない。 

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 やっとのことでケーブル駅到着。駅舎からはみ出したハイカーの列が道路まで延々。では、ケーブル下の胸突き八丁をさらに登るか? む、登らない! 断固! ここまでにすでに登り坂用のエネルギーを9割がた使い果たした。これ以続ければ途中で死ぬ!

 

 

 20分ほど並んでケーブル乗車、5分ほどで山頂駅到着、らくちん。参拝者、ハイカー、若い人が多い。近頃の若い人は何処にいるのかと思っていたが、こんなところにいっぱいいた。なに、自分が若者のいないところばかり歩いていたんだナ。

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 ケーブル駅から御嶽神社に向かう緩やかな参道は、まさに紅葉真っ盛り。秩父の仇をとれたか? なるべく人波を避けてゆるゆると歩を進める。左手の谷側の眺めが一段と鮮やか。やはり標高が高いせいだろうか。ちなみにwebから標高の画像拝借。

 

 

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 参道の紅葉いろいろ

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  御嶽神社直下の急坂まで来たけれど、当面の目標「長尾平休憩所」は、たしか日出山へ行く途中だったように記憶している。もうエネルギーが枯渇しているから、この急坂をズルして、日出山方面へバイパスしようと考えた。君子あやふきに近寄らず。

 向かってみると、もの凄い坂道が下っている。おい、ほんとに大丈夫なのか? しかし脚は下りが好き。で、下り切った。むむ、どうも違う、戻らねば。下りが急なら戻る登りはきつい。もはやいかなる坂でも1ミリだって登る力はない。ズルこきは3文の損。

 

 

 どうやらこうやら、御嶽神社下の階段まで戻る。人が老若わんさかいて、みな階段を登っていく。案内板を見ると、鳥居の先の門の脇から長尾休憩所へ行く道が分岐していた。記憶なんてあてにならないなあ、特にわが記憶は。

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 門まで登ってさらに拝殿、本殿への階段が続く、が、行かない。今まで何回か拝殿には行ったし、それにもう、これ以上登っていくエネルギーがないのだ。善男善女はきちんと登っていく。ズルしている意識で、いささか後ろめたい気がしないでもない。

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 ようやく長尾平休憩所に到着。御岳山から東側に長く突き出た舌状台地で、そこここにテーブルと椅子が設けられ、ハイカーが談笑、あるいは楽しそうに食事中。それにしても人が多いなあ、そして誰も嬉々として、とても楽しそうだ。

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 奥まで行くと、馬の背の開けた草地で見晴らしがいい。草地に腰を下ろし、靴を剥ぎ取って昼飯。右隣には3歳くらいの女の子と母親、女の子が飛んでもなく可愛らしい。左は高校生男女。北の遥かに御岳の家並みが小さく白く光っている。

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 ちかごろのハイキングでは、みなガスバーナーを持参している。向こう側のベテランらしきおっさんはオデンをついばんでいるし、隣の高校生はラーメン。こちらは一人さみしく、冷えた握飯と冷たい水だけ。けど、どんまい!

 向こう側の山肌の赤や黄が、杉の緑に点々と映えて美しい。晴れていれば見ごたえがあったろうけれど、ちょびっと陽が射してもすぐに曇ってしまう。天気予報の嘘つきやい、もう少し当ててくれ、たとえ秋の空であっても。

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 さて、これから山を下って五日市養沢の谷に出て、その里道を歩こうと思う。紅葉も期待できそうだ。下り道は石ころや丸太の段々道、それが結構な急斜面、でもまあ、下りだから。少し前をお母さん、お婆さん、小学低学年の男の子が下っていく。

しかし下り道もきつかった。つんのめらないように腰を落として、足を下の段によいしょと下ろせば、膝がさび付いたようにギシギシいう。初めの方の段々道ですっかり膝がギシギシになってしまった。その後ちょっとの間緩やかな道でほっとする。

 それもつかの間、最後は削ぎ落としたような傾斜、辛うじて斜面に張り付いている石はぐらぐらして、ともするとずるりと滑る。ここで小石に乗って滑って尻餅をつき、下で待機していた若い女性を驚かしてしまった。下り脚用のエネルギーもゼロになった。

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 下りきって右側の沢を渡ると「七代の滝」だが、待てよ、先の方になにやら張り紙。「養沢、五日市方面は、がけ崩れのため通行禁止」!!! どび~~ん! なんていうことでしょう! 今日の目的がガラガラと崩れ去ってしまった。

 その道から初老の男が出てきたので「行けませんか?」「ダメですな」「右の滝からう回路がありますかね」「あると思いますよ」ということで、頭の中は”七代の滝からのう回路”で一杯になった。

  

 七代の滝へ行くと、狭い岩場に20人ぐらいの人が休んでいる。う回路のことを何人かに聞いてみたが、みな知らないという。中には「山の地図がなくちゃ分かりませんよ、スマホも入りませんしね」という。それはそうだ、何も準備してないこちらが悪い。

 それで分かったことは、五日市の養沢方面に行くなどという酔狂な人は誰もいないということ。誰もが皆ここからロックガーデンを経て、御嶽神社方面へ戻る「ハイキングコース」を辿るのだということ。だからそんな変則的コースはだれも知らないのだ。

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 つまるところう回路なんてない。通行禁止ならば御嶽神社方面に戻るしか手がないのだ。しかしこのハイキングコースが、どれほどの距離でどんな案配なのか全く知らない、脚のエレルギーをすべて失ってしまって、歩けるのだろうか。

 ロックガーデン方面の取っ付きは、赤錆びたはしご、それも屋根に上るほどの傾斜、しかし誰もが登っていく。登る。しかしたちまちぜえぜえ。途中休んでいる大学生らしき一団が、どうぞ先に、と言う。いや、歳だからお先にと言うも、敢えて勧められ先に。

 しかし直ぐにこの一団に追いつかれ、あえなく先を譲る。この一団とはこの後も後先になってコースを歩いた。礼儀正しく控えめで、とても好ましい若者たちだった。はしごは30mも続き、終わったと思ったら木の根っこの急登、体中のエレルギーはゼロ。

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 なんとかかんとか登りきったところに「天狗岩」というのがあった。巨大な岩塊の側面をわずかに切り欠いて鎖が張ってある。切り欠きに危うく足を乗せ、鎖でからだを持ち上げて大岩の裏側に登るらしい。これはさすがにご遠慮申し上げた。

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 そこからちょっと下って、小さな沢沿いの道になった。石段もあるが、概ね緩やかな傾斜で登る。ぞろぞろと人の列が続く。周りの黄葉が美しい。が、エネルギーゼロの身は景色を愛でる余裕がない。つくづく思う、体力が衰えたなあ、と。

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 前を行くカップルがいる。女性は両杖を突きゆっくりゆっくりと登っている。男性がそれを保護するようになにかと気を遣っている。この二人とも、後先になったが男性は道を譲るにも会釈し、女性を守り、礼儀正しく紳士的で素晴らしい若者に見える。

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  近頃の若者は・・・と年寄りの一人として思っていた。なんでも気に入らない。やたらに「むちゃくちゃ」と言う、名詞をなに構わず端折る、英語らしきカタカナを連発する、軽薄で騒がしい・・・。

 しかしそれは、どうもテレビとネットの世界の若者像であって、現実の若者たちは、礼儀正しく、人に優しく、現実に根差し、着実でしっかりしているのではあるまいか。今日、後先になりながら歩いた若者を見ているとそう感じる。認識が変わったと思う。

 

 

 そんなことで、よろよろ歩きながらも、休憩所に到着した。大勢の人が休んでいる。ここでもガスバーナー調理が盛んだ。若い人たちの間で、キャンプが盛んなのだろう。だんだん世の中が窮屈になり、それで自然志向なのだろうか?

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  少し休んでから歩き出し、広瀬の滝に至る。7mぐらいの落差があって、水量もまあまあ滝らしい。夏なら涼しくてほっとするだろうけれど、いまの時期じゃ見ているだけで寒くなりそうだから、滝の脇を通り抜けた。

 ここから先は沢を離れ山肌の道となる。ジグザグに折れ曲がって人の列が続く。またまた登り道かあ、と気が萎えるが、それはすぐ終わって、比較的平坦な道となった。件のカップルが道を譲ってくれる。

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 平坦な山道から眺める景色は、余裕があるから、ことのほか美しい。光り輝くような黄葉の森がある。冬前の一瞬の華やぎ。遠方の山の、錦をちりばめたパッチワーク模様も見ごたえがある。このハイキングコースに回ってよかったなと思う。

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 前方で山を見上げている親子がいた。一緒に覗いてみたらカモシカが夢中で葉っぱを食べている。薄暗い林の中だし、望遠倍率が低いのでわかりにくいが、確かにニホンカモシカだと思う。人声がしても逃げない。山に餌が少ないのだろうか。(写真中央)

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 そしてすぐに長尾平分岐点に戻ってきた。やれやれと思う。日ごろ敬遠している、人がいっぱいのハイキングコースを歩かざるを得ないことになったが、おかげで気づかされたこともある。やはり、偏屈はいかんなあと思う。 

 参道をケーブル駅に向かう。下りの脚エネルギーもゼロだから、とてもあの急坂を歩けない。ケーブルは又行列だが、20分くらいの待ち時間で乗れた。時刻は3時半ごろ、速やかに日暮れが迫る。

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  下のケーブル駅からはまた歩く。赤い橋のところまでは、つんのめるような急坂だが、そろりそろりと歩を運ぶ。いつでも「歩き」が終わって駅に向かう時は、体がへろへろだが、今回もまた然り。多摩川の岸辺も紅葉している。

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  今回距離は、(27000歩×0.6)=16㎞。

 5時半ごろ帰宅。

 2,3日は筋肉痛、とほほ。