doniti 日誌

( おもしろき こともある世を おもしろく)

久しぶり野川

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 数年ぶりになるけれど、野川を歩いて来ようと思う。

 野川は、国分寺崖線の直下を流れる、湧き水を主体とした川であり、その湧き出しから追いかけて見ることができるので楽しい。果たして数年ぶりの野川は変わっているのか、相変わらずなのか、いささか楽しみでもある。

 で、野川の湧き出し地域の付近には、古代の国分寺跡地や古代官道の発掘遺跡(現在は埋め戻されている)などもあり、これも数年ぶりの再訪だけれど、はたして変化ありや無しや、その辺りも確かめてみたいと思う。

 

 

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                       (ネットからお借りして一部改変)

 

 

  中央線・西国分寺駅のすぐ東に、幅の狭い横長の奇妙な建造物がある。壁のない屋根だけの建物で、ひょいと中を覗くと茶色の土が長々と横たわっている。これは古代の官道、東山道武蔵路の路面なのだそうだ。

 このあたりの再開発に伴って発掘調査したところ、路面が現れそのまま屋根をかけ保存しているらしい。この道路は群馬県東山道から分岐し、一路真っ直ぐ武蔵国国府目指して南下しているという。横幅が9~12mというから、今でいえば2車線道路、古代においてこんなものを作るなんて、なんてこった! と思う。

 

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 そこから南側を望むと、大きなマンションの脇に茶色い道路が続き、両端が色違いの黄色いセメントで表示され、これがこの道路の端の側溝部分だという。ここも発掘され埋め戻されたが、道幅を黄色く表示し、当時をしのぶよすがとして残されている。

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 そしてその先、住宅の空き地に、道路構造を詳細再現し、説明板で解り易いように解説した場所がある。ここまで辿ってくると古代の官道がどんなものだったか、よくわかった、、、ように思う。たしかにバカでかい道路である。

 しかしながら説明板によると、せっかく作った立派な道路も、数年にして草に埋もれ雨に流され、たちまちにして埋もれてしまったようだ。要するにそれだけの必要性がなかったのだろう。車は勿論なかったし、人だって馬だってそんなに頻繁には通らない、言っちゃあ悪いが無用の長物。それを営々として造れ! と命令された庶民や哀れ。

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 そこから南に向かって国分寺崖線を下っていく。ぐんと空が広がり雲の下に畑が続く。振り返ると国分寺崖線が、だんだんの住宅や黒い森となって連なっているのがよくわかる。あの黒い森のあたりが、本日の主題、野川の湧水群だろうか。

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 まず府中街道武蔵野線を西へ越えて国分尼寺跡へ行く。再建された基壇が草に埋もれている。60人もの尼さんがここでどんな生活をしたのだろうかと思う。ここも広々とした公園として保存され樹木に囲まれて清々しい。

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 戻って国分僧寺跡へ行く。ここも広く公園化されていて、三々五々散歩したり、ぼんやり佇んだり、なかには太極拳を執行中の人もいる。今日は休日なので家族連れ、仲の良いカップル、お婆さん、様々だ。共通していることは、みんなのんびり。

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 金堂の基壇跡がきれいに煉瓦で被覆されていた。以前は巨大な礎石だけが散らばっていた。その礎石は二抱えも三抱えもあり、いったいどこからどうやって運んできたものだろうかと思った。いま煉瓦の上に行儀よく並んで頭を出している。

 基壇の片隅に腰を下ろし一服する。空はおおぐもりの曇り空だが、雨は大丈夫だろうと思うことにした。周りの緑が美しい。住宅が周りに波のように押し寄せるのを押しとどめ、これだけの広大な土地を確保して、後世に残そうとする意志はまことにエライ!

 

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 七重の塔跡にもいってみた。ここは以前と少しも変わっていない。狭い敷地に塔の礎石が残る。もし新田義貞に焼かれず、震災にも戦災にも奇跡的に無事だったとしたら、現在どんな姿を目にすることができただろう、としょうもないことを考えてみた。

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 古代官道の遺構も武蔵国分寺跡の姿も、昔とそんなに変わりがなかった。しかしながらさりながら、野川がどうとか言ってるけれど、ちっとも姿を見せんじゃないか!! 

 左様、ここまでは前書きであり、これからおもむろに野川を登場させるのだが、天から声あり! 冗漫である! 

 そんなわけで、長くなって困るけれど、野川登場。

 

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 野川には、国分寺崖線から湧き出した水が、いたるところで流れ込んでいる。中でも最上流と思われるこの付近では、「日立研究所敷地内」からの流れと「真姿の池」からの流れが、国分寺駅のすぐ南側で合流し、野川となっているようである。

 

 「日立研究所敷地内」には特定の日にしか入れないので、「真姿の池」へ行ってみた。崖線下の石積みから、きれいな水が滾々と湧き出している。湧き水というのはどうしてこう綺麗に澄んでいるのだろうと、毎度思わせられる。

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 実はもう少し上流に、もう一つ湧き出している場所がある。それは万葉植物園がある現在の国分寺の裏手あたりから流れ出しているらしいのだが、塀で囲まれているのでその湧き出し口は確認できない。

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 そしてこの流れ沿いに「お鷹の道」が整備され、真姿の池からの流れと合流、さらさらと心地よく流れ下っている。このお鷹の道をたどる人は多い。今日よく見かけたのは、お婆さんとその娘らしき二人連れ、熟年女性同士。女性に人気らしい。

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 お鷹の道沿いのせせらぎは道から離れ、住宅の中を貫流し、国分寺駅のすぐ南側で北からの「日立研究所敷地内」の流れと合流、合わさって結構な水量となった。奥の白波がお鷹の道沿いの流れ、手前の大きな水量が「日立研究所敷地内」からの流れ。

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 しかしここからしばらくは野川沿いに道がない。住宅の中を見当をつけながら下流へ。そして小金井市域へ入ると野川の両岸に堂々たる遊歩道が現れる。川岸に桜の木が多い。春のその季節はほんとに美しい。

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 この近くに貫井神社がある。そこにも湧水があり野川に流れ込んでいるので、立ち寄ってみる。拝殿の脇に小さな洞窟のような岩組があり、その奥からこれまた滾々ときれいな水が湧き出し、正面の赤い橋が架かっている池に流れ込む。その末が野川に合流。

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 野川の遊歩道は立派なもので、気持ちよく淡々と歩く。川べりに降りて歩くこともできるが、年寄りだから舗装された上を歩く。休日のため子供たちや家族連れが川で小魚を掬ったり、水遊びをしたり、その姿がほほえましい。

 子供たちが緑の中で遊んでいるのを見ることぐらい楽しいものはない。古い、骨董的人間だから特にそう思うのかもしれないが、なんといっても子供たちが生き生きしているように見える。ゲームより外の緑!

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 そうして武蔵野公園までやってきた。ここは緑が一層濃密で、大きく枝を広げた木々が周りを埋め尽くしている。向こう岸の原っぱで子供たちの声が響き渡る。こっちの原っぱで少年たちが野球の練習をしている。お互いうんと離れてキャッチボール。

 髪の長い子がいるなと思って見ていると、なんと可愛い女の子だった。しなやかなフォームから、はるか先の大人に向かって見事なスローイングをしている。優しそうなおとなしそうな、そして華奢な体つきからは想像できないほど見事だ。

 

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 西武多摩線をくぐって野川公園を突き抜け、調布飛行場へ行く。土手の上からゆったりと眺めると空が大きい。飛行機は飛び立ちそうもないな、と思ってゆっくり一服をしていたら、ぽつりと雨が落ちてきた。

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 それでも動かずにいると、滑走路に飛行機が現れた。滑走路の端まで行ってこちらに向き直り、そうして動き出した。200mも走ったかと思うと、ふわりと浮き上がり瞬く間に頭上を通過した。かっこいい~~。頭の上に来て初めて爆音が聞こえた。

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 この後、大沢の水車小屋「しんぐるま」へ行ったのだが、ボランティアガイドの話に夢中になって写真無し。曰く、みずぐるまは10年ぐらいしか持たないから昨年新調したばかり。このみずぐるま一つで12本の突杵を持ち上げ、2台の石臼を引く。水の力は偉大だ。

 曰く、江戸時代(1808年)に水車経営を始めたが、木製の歯車、滑車、粉の昇降機など、当時から使われていたものだ。みずぐるまは直径4.6m、この大きさによってどのくらい馬力(?)が出るかが決まる。

 曰く、これ一台で、籾を取り、精米し、麦やそばを粉に挽く。水車がなければ銀シャリも、うどんも、蕎麦もない。単純なように見えて、なかなかどうして働き者、昔の人はその微妙複雑な運動をよく知っていて制御した。

う~~む、参りましたな。

 

 

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 さて帰ろうと思う。まっすぐ北に向かえば中央線の駅に出るはず。

 と思ったが、住宅街の狭い路地をあっちへ入りこっちに曲がり、

 一向に駅に着かない。悲しきかな方向音痴。

 てなわけで、5時半ごろ帰宅、距離は約20.3㎞。

 ちょっと疲れたね!